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令和6年3月29日に、「中小企業省力化投資補助金」の公募要領が公開されました。
本事業は「中小企業等事業再構築促進事業」を再編して行われ、IoTやロボットの導入に対して最大1,500万円を補助するものです。
申請する中小企業等、対象製品を製造するメーカー・販売代理店等双方にとってメリットのある事業で注目されています。
そこでこの記事では、「中小企業省力化投資補助事業」について解説します。
中小企業省力化投資補助事業 予算規模・事業目的
掲載ページ:経済産業省 令和5年度補正予算案の概要
中小企業省力化投資補助事業には、中小企業等事業再構築促進事業を再編して1,000億円(中小企業等事業再構築基金の活用などを含めて総額5,000億円規模)の予算が盛り込まれています。
「省力化」とは、業務を見直して効率化を図り、生産性向上・労働時間の削減を行うことを指します。このことから「省力化投資」は、省力化を目的としたIoTやロボットといった設備への投資を指すと言えます。
参照:経済産業省 経済産業省関係令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)
掲載ページ:経済産業省 令和5年度補正予算案の概要
本事業は人手不足に悩む中小企業等に対して、IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助するものです。
またあわせて、この事業によって中小企業の付加価値や生産性向上を図り、賃金向上につながることを目的としています。
中小企業省力化投資補助事業 カタログについて
機器カテゴリ | 対象業種 | 対象業務プロセス | |
A | 清掃ロボット | 宿泊業、飲食サービス業 | 施設管理 |
B | 配膳ロボット | 飲食サービス業、宿泊業 | 配膳・下膳 |
C | 自動倉庫 | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 | 保管・在庫管理、入出庫 |
D | 検品・仕分システム | 倉庫業、製造業、卸売業、小売業 | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 |
E | 無人搬送車(AGV・AMR) | 倉庫業、製造業、卸売業、小売業 | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 |
F | スチームコンベクションオーブン | 飲食サービス業、宿泊業、小売業 | 調理 |
G | 券売機 | 飲食サービス業 | 注文受付 |
H | 自動チェックイン機 | 宿泊業 | 受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応 |
I | 自動精算機 | 飲食サービス業、小売業 | 請求・支払 |
掲載ページ:中小企業省力化投資補助金 公式HP
本事業では、中小企業等がIoTやロボットなどの付加価値額向上や生産性向上に効果的な汎用製品を「カタログ」から、自社の課題・ニーズに合わせて選択・導入することとなります。
令和6年3月29日時点では上表のとおり、清掃ロボットや配膳ロボット、券売機、自動チェックイン機などがカタログに掲載されています。
令和6年4月15日にはカタログが更新され、具体的なメーカー・製品・型番まで公表されています。今後さらに、カタログに掲載する省力化支援事業者と機器は、公募期間中に並行して拡充されます。
中小企業省力化投資補助事業 申請要件
本事業における主な申請要件として、以下4項目が挙げられます。ただし、このほかにも要件が定められていますので、申請には必ず公募要領をご確認ください。
(1)人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者等であり、客観的にそれを示す証憑を提示、あるいは人手不足が経営課題となっている旨の申告を行うこと
(2)カタログに登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で取り組む事業であること
(3)導入する省力化製品に紐付けられた業種のうち少なくとも1つ以上が、補助事業者の営む事業の業種と合致すること。
(4)補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定し、採択を受けた場合はそれに取り組むこと。
掲載ページ:中小企業省力化投資補助金 公式HP
中小企業省力化投資補助事業 補助率・補助上限額
本事業で予定されている補助率・補助上限額は、以下のとおりです。なお、別途示される「賃上げ要件」を達成した場合、括弧内の値まで補助上限額が引き上げられます。
補助率:1/2
補助上限額:従業員規模に応じて、補助上限額が異なります。
・従業員数 5名以下: 200万円 (300万円)
・従業員数 6~20名: 500万円 (750万円)
・従業員数 21名以上:1,000万円(1,500万円)
これまでの事業再構築補助金の補助上限額が、中小企業の場合、最大1億円(申請類型・要件による)であったことと比較すると、中小企業省力化投資補助事業の補助上限額は大幅に縮小されています。
また、中小企業基本法による中小企業の定義と照らし合わせると、中小企業のなかでも特に従業員規模は小規模事業者と同等の小さな企業に焦点を当てた事業であることがわかります。
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
---|---|
製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
以下、参照)小規模事業者の定義
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
---|---|
製造業その他 | 従業員20人以下 |
商業・サービス業 | 従業員 5人以下 |
中小企業省力化投資補助事業 賃上げによる補助上限の変更
補助事業終了時点において以下2つの項目を達成する場合、補助上限の引き上げを適用します。ただし、申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明していることが必要です。
(a)事業場内最低賃金を45円以上増加させること
(b)給与支給総額を 6%以上増加させること
なお、正当な理由なく、賃上げの目標を達成できなかったときは、補助額の減額が行われますのでご注意ください。
掲載ページ:中小企業省力化投資補助金 公式HP
中小企業省力化投資補助事業 成果目標
本事業における成果目標として、以下、記載されています。
付加価値額の増加、従業員一人当たり付加価値額の増加等を目指す。
以上の内容をもとに、これまで実施してきた中小企業等事業再構築促進事業のスキームで実施される予定です。ただし、関係資料には以下の記載もあります。
※なお、中小企業等事業再構築促進基金を用いて、これまで実施してきた、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、企業の思い切った事業再構築の支援については、必要な見直しを行う。
この記述により、事業再構築補助金については内容の見直しが行われると考えられます。
中小企業省力化投資補助事業の実施による中小企業等のメリット
本事業の実施により、中小企業等にとっては以下のようなメリットがあります。
1. 省力化製品が対象であるため、事業における省力化の後押しとなる
2. 自社の課題・ニーズに合わせて製品を選ぶことができるため、比較的申請しやすい
3. 導入を支援する「販売事業者」が申請・手続をサポートするため、申請がスムーズ
4. 補助率1/2で、経費の半分が補助される
中小企業省力化投資補助事業の実施によるメーカー・販売代理店のメリット
本補助事業の実施によって中小企業等にメリットがある一方、対象製品を製造するメーカー・販売代理店等にも、以下のようなメリットがあります。
1. お客さまの省力化推進に貢献できる
2. 自社製品の販売促進ができる
中小企業省力化投資補助事業 スケジュール
スケジュールは、次のとおりです。
▼第1回公募
申請開始:令和6年6月25日(火曜日)
申請〆切:令和6年7月19日(金曜日)予定
採択発表・交付決定:令和6年8月下旬予定
▼第2回公募以降
令和6年8月9日(金)より応募・交付申請は随時受付に変更となります。(メンテナンス期間を除く)なお、採択・交付決定は申請から概ね1~2ヶ月程度を予定しています。
採択予定件数は計120,000件程度となります。
(1件当たりの補助申請額によって、予定件数の増減あり)
参照:中小機構 令和5年度補正予算「中小企業省力化投資補助事業」に係る事務局の公募について
参照:「中小企業省力化投資補助事業」の申請受付開始予定について
まとめ
この記事では公募要領が公開された「中小企業省力化投資補助事業」について解説しました。本事業は、人手不足の問題解決につながるIoT・ロボットの導入を支援する事業です。
社会全体で人手不足が深刻化するなか、製造業や飲食業では、生産性向上が特に大きな課題となっています。また、物流業が抱える「2024年問題」解決に向けた「ラストワンマイル配送の効率化・最適化」も喫緊の課題と言えます。
現在、こうした人手不足の課題を抱えている場合や設備投資による生産性向上を検討している場合は、ぜひ、本事業をご活用ください。
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