小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が商工会議所や商工会のサポートのもとで経営計画書などを作成し、地道な販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。今回は、その一つである「低感染リスク型ビジネス枠」について、わかりやすく解説します。
小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)とは
小規模事業者持続化補助金には、「低感染リスク型ビジネス枠」と「一般型」があります。
それぞれの特徴と違いを解説します。
小規模事業者持続化補助金(感染リスク型ビジネス枠)の概要
新型コロナウイルス感染防止と事業継続を両立させるために、対人接触機会の減少を目的にした積極的な投資を行い、ポストコロナに向けた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等の取組を支援するために、その取り組みの経費の一部を支援する制度です。
小規模事業者持続化補助金(一般型)との違い
小規模事業者持続化補助金(一般型)とは、小規模事業者が販路開拓等の取組や業務効率化の取り組みを支援するため、それらの費用の一部を補助する制度です。
「一般型」と「感染リスク型ビジネス枠」は、上限額、補助率、申請方法などに違いがあります。主な違いは下表のとおりです。
項目 | 感染リスク型ビジネス枠 | 一般型 |
上限額 | 100万円 | 50万円 |
補助率 | 3/4 | 2/3 |
感染防止対策費 | 対象。原則、補助金総額1/4(最大25万円) | 対象外 |
申請方法 | オンライン申請のみ | オンライン申請、郵送による申請 |
経営計画書等の事前確認 | 任意 | 必須 |
第1回採択事業者の傾向
2021年7月2日に経済産業省から小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)第1回受付分の採択結果が公表されました。
申請件数は7,827件に対して3,512件の採択事業者が決定しています。採択率は約45%となっています。
公表されている採択事業者の補助事業内容を見ると、営業会社の対面からリモート営業への転換を図る取り組み、小売店のEC拡販に向けた取り組み、飲食店の予約システム導入などが多くあります。
補助対象者と対象事業
小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)の補助対象者は、原則、小規模事業者です。
補助対象者は業種ごとに従業員数などにより対象か否かを判断します。対象事業に該当しないと判断される注意点も含めて解説します。
補助対象者
1.下記に該当する小規模事業者と要件を満たす特定非営利活動法人が対象です
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
2.以下の全ての要件を満たす方が補助対象者になり得ます。
①資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
②直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
③申請時に虚偽の内容を提出した者ではないこと
④反社会的勢力排除に関する誓約事項に記載された内容に該当しない者であり、補助事業の実施期間内・補助事業完了後も該当しないことを誓約すること
⑤過去に持続化補助金の一般型、コロナ特別対応型、低感染リスク型ビジネス枠で採択されていないこと
補助事業
補助対象となる事業は、ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービスや生産プロセスの導入等に取り組みなど、感染拡大防止と事業継続を両立させるための対人接触機会の減少に資する前向きな投資を行う事業です。
以下に該当する事業と判断された場合は不採択又は採択・交付を取り消しとなりますので、注意してください。
① 本公募要領に沿わない事業
② 補助対象経費の中に対人接触機会の減少に該当しない項目を含む事業
③ 新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入がなされない事業
④ 公序良俗に反する事業
⑤ 公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業
⑥ 事業・補助金の重複について
・同一法人・事業者が同一の公募回で複数申請を行っている案件。
・国が助成する他の制度と重複する事業は補助対象となりません
・他の小規模事業者等から提出された事業と同一若しくは極めて類似した内容の案件。
⑦ その他申請要件を満たさない事業
補助率と対象経費
小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)の補助率は3/4、補助上限額は100万円です。
補助対象経費には、機械装置等費、広報費、開発費、資料購入費、感染防止対策費などがあります。
なお、感染防止対策費は補助金総額の1/4(最大25万円)が上限です。
また、2021年1月8日以降に発注、支払い、使用した経費も補助対象にできます。
申請手続きと審査
小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)は、正式申請をした後に審査が実施されて補助の可否が決定されます。申請手続きに必要な書類や審査の内容を解説します。
必要書類 | 個人 | 法人 | NPO |
※経営計画及び補助事業計画 | 〇 | 〇 | 〇 |
※宣誓・同意書 | 〇 | 〇 | 〇 |
直近の確定申告書(第一表、第二表) ※税務署の収受日付印が必要 収支内訳書(1・2面)または所得税青色申告決算書(1~4面) |
〇 | × | × |
貸借対照表及び損益計算書(直近1期分) | × | 〇 | × |
貸借対照表及び活動計算書(直近1期分) | × | × | 〇 |
現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書 (申請書の提出日から3か月以内の日付のもの) |
× | × | 〇 |
法人税確定申告書 ※税務署の収受日付印が必要 (別表1及び別表4(所得の簡易計算))直近1期分) |
× | × | 〇 |
※賃上げ表明書、※賃上げ表明書、支援機関確認書 | 任意 | 任意 | 任意 |
※は所定の様式があります。
緊急事態宣言に伴う時別措置の適用を受ける場合は、別途、月間事業収入減少証明(所定の様式)が必要です。
審査内容
補助金の採択審査は提出された資料に基づき、有識者等により構成される審査委員会において行われます。採択審査は非公開で実施されます。審査には補助対象者の要件を満たしたしているかをみる要件審査と、提出された資料に基づいて有識者等による書面審査があります。
申請の注意点
本事業の採択となった事業者は、定められた条件を守らなければなりません。
主な遵守すべき条件は下記のとおりです。
・本事業の採択となった事業者は、補助金の交付に係る必要な手続きを行わなければなりません。
・補助金交付決定を受けた後に、経費の内容を変更しようとする場合、または補助事業を中止、廃止する場合は、 事前に承認を得なければなりません。
・補助事業の完了後、定められた期日までに実績報告書を提出しなければなりません。
・補助対象事業の経理・書類の保存を後5年間保存しなければなりません。
まとめ
昨今のコロナ禍、またポストコロナに対して、事業者は今後も新型コロナウイルス感染防止と事業継続の両立を強く求められます。そのためにも、小規模事業者持続化補助金(低感染リスク型ビジネス枠)を活用し、ぜひ新たなビジネスモデルの構築に活かしてくたざい。
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