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「中小企業新事業進出補助金(以降、新事業進出補助金)」は、新市場・新事業への挑戦を後押しし、設備投資などに活用できる制度です。
注目度の高い補助金ではあるものの、第1回公募(2025年7月応募締切)の採択率は37.2%(応募3,006件/採択1,118件)と決して高い数値ではありません。
そこでこの記事では、新事業進出補助金を申請する際に確認すべきポイントについて解説します。
参照:中小企業新事業進出補助金事務局 新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
市場の新規性があるか
新事業進出補助金では、既存事業の延長ではないかという点にチェックが入ります。
サービスの名称や内容が変わっても、対象となる市場が同じだと新規性が認められません。
既存の事業で提供していたターゲットとは異なるターゲットが対象で、新事業で提供するサービス・システムも異なっている必要があります。
そのため、事業計画書では「なぜ今その市場に参入するのか」「誰がそのサービスを必要としているのか」「既存市場との違いはどこか」をデータと理由付きで示すことが重要です。
既存事業・新規事業共に一般顧客がターゲット等の場合は、顧客がそのサービスを「購入・利用するニーズ」から紐解いていくことで、事業計画書において新規性をアピールすることができます。
【作成のポイント】
●既存サービスとの違いを明確に示す
●解決できる課題を数値や事例を根拠として提示する
●他社にはない価値や強みを示す
●市場や利用シーンの拡大可能性がある
●競合他他社が模倣しにくい理由がある
作成のポイントは、審査者が採択後に伸びる可能性がある事業かどうかを判断する指標になります。
特に、既存サービスとの違いは抽象的な表現だとその時点で不採択になる可能性もあります。
比較表・導入効果の数値・顧客の困りごとの具体例など、客観的な根拠を添えることで説得力が上がります。
参照:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
製品の新規性があるか
市場の新規性に加えて、提供する製品・サービスそのものが新しいかどうかも審査ポイントになります。
名称だけ変更した製品や、既存とほぼ同じ機能では新規性とは判断されません。
改善点や差別化ポイントを、技術構造や生産プロセス、品質、機能性などの視点から説明する必要があります。
同じ市場の競合製品と比較して優位性を示すことも重要です。
【作成のポイント】
●自社の既存製品との違いを具体的に説明する
●新しい提供価値や性能、効能を示す
●既存市場の類似製品との優位性を明確にする
●技術構造や生産プロセスの改善点を提示する
●導入による顧客メリットを具体化する
新規性は単なる見た目や名称の違いでは評価されません。
既存製品との比較を表や数値で示すと、審査側に伝わりやすくなります。
性能や効能の改善・独自技術の活用・顧客にとっての価値向上など、具体的な差別化ポイントを明確に書くことが重要です。
参照:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
新事業売上高要件を満たせるか
補助事業終了後3~5年で、新事業の売上高が総売上高の10%以上を占める必要があります。
既存事業の売上が高い場合は、この要件を満たすために計画の精度を高める必要があります。
事業計画書では、単価や販売数量、顧客獲得数、販路構築のスケジュールを具体的に示し、どのように売上を積み上げていくかを明確にすることが求められます。
【作成のポイント】
●単価・想定販売数量を明示する
●販路構築スケジュールや販売目標を具体化する
●顧客数推移や受注計画を数値で示す
●市場規模や潜在顧客数をデータで補強する
●販売戦略や営業活動の実施手順を整理する
売上高要件を満たすには、計画の数字に根拠が必要です。
単価や販売数量だけでなく、販路や営業戦略、顧客数の推移を明確に示すことがポイントになります。
参照:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
付加価値額要件を満たせるか
付加価値額(または従業員1人当たり付加価値額)が年平均4.0%以上であることが求められます。
付加価値額は『営業利益+人件費+減価償却費』で算出されるため、売上だけでなく利益率や生産性向上策も計画に含める必要があります。
事業計画書では、設備投資やシステム導入による効率化・作業工程の改善・人員配置の最適化など、付加価値額を増やすための具体的な施策を示すことが重要です。
【作成のポイント】
●計画上の営業利益率や人員増加計画を明示する
●設備投資や生産性向上策を記載する
●効率化施策による付加価値向上の根拠を示す
●数値目標が現実的であることを説明する
●従業員1人当たりの付加価値額向上策を明確にする
付加価値額要件は計画上の数値でも問題ありませんが、達成根拠が不十分だと低評価になります。
営業利益率や人員配置、効率化施策など、具体的な手段と数値を明示することが重要です。
参照:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
賃上げ要件を満たせるか
新事業進出補助金では、一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年間の成長率以上、もしくは年平均2.5%以上である必要があります。
数値が高い方が採択に近づきますが、個社ごとに個別に定めた賃上げ率を達成することがポイントです。
未達の場合は補助金の返還リスクが生じるため、現実的に達成可能な数値を設定することが求められます。
売上や利益計画との整合性、人件費増加への対応策も明記することで、審査者に実現可能性を伝えることができます。
【作成のポイント】
●過去の賃上げ実績や採用実績を整理する
●達成可能かつ高い賃上げ数値を設定する
●売上・利益計画と賃上げの整合性を説明する
●人件費増加に対する財務裏付けを示す
●設定した数値を継続できる施策を明示する
賃上げ要件は、達成可能性と根拠が審査で重視されます。
自社の過去の賃上げ実績や採用実績を十分に分析し、達成可能かつできる限り高い賃上げ数値を設定することがポイントです。
参照:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
事業場内最賃水準要件を満たせるか
補助事業終了後3~5年間、毎年4月時点で事業場内最低賃金が、補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準である必要があります。
単に給与水準を上げるだけでなく、雇用形態や従業員構成、利益計画との整合性を確認することが重要です。
事業計画書では、現在の事業場内最低賃金を整理し、今後も地域別最低賃金との差を維持できるかを示す必要があります。
【作成のポイント】
●現段階の事業場内最低賃金を整理する
●今後も地域別最低賃金より30円以上高い水準を維持可能か確認する
●雇用人数や給与改定スケジュールを踏まえた計画を策定する
●人件費と利益計画の整合性を説明する
●継続的な給与改定や評価制度などの仕組みを補足する
単なる数値設定ではなく、雇用形態や従業員構成、利益計画との整合性を確認することが重要です。
今後、実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準で雇用を継続できるか事前に確認し、申請する必要があります。
参照:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金
まとめ
この記事では、新事業進出補助金を申請する際に確認すべきポイントについて解説しました。
今回解説した6つのポイントの他にも、
●一般事業主行動計画の公表
●融資を受ける前提で補助事業を実施する場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けている必要がある
などの注意事項があります。
新事業進出補助金は事業の新規性が要件ですが、単純に新しい事業の構築に使えるわけではありません。
既存事業のノウハウが活かせる等「なぜ当社がやることに意味があるのか?」を明示する必要があり、十分に審査のポイントを理解し、申請することが必要です。
当社では、より採択率を上げるため、具体的な経費の内訳に関するご提案等も可能です。
今後、新事業や新市場への挑戦を検討されている場合は、ぜひ本補助金の活用についてご相談ください。








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