起業家が事業を志し、活動母体として組織化する際には、会社を設立するのが一般的です。
その際に必要となるのが会社登記(法人登記)で、法務局に対して申請しますが、この会社登記は法律で義務付けられており、必ず行わなければいけない手続きです。
会社登記について詳しく解説します。
会社登記とは
会社登記とは、会社の商号(社名)や本社所在地、代表者の氏名と住所、事業目的など、外部との取引を行う上で必要となる事項を所轄の法務局(法務省の部局)に登録し、一般に開示する行為を指します。
創業者が設立した会社の概要を一般に公表することで、自社の信用維持を図るとともに、安心して外部と取引できることを目的としています。
会社(法人)の形態としては、株式会社の他にも持分会社(合同会社、合資会社、合名会社)、一般社団法人、一般財団法人、特例有限会社、NPO法人などがありますが、どの分野でも必ず登記を行う必要があります。
会社登記手続きを終了すると、正式に登記が行われた証拠となる「登記事項証明書」が法務局から発行されます。登記事項は誰でも自由に閲覧できるため、ビジネスの際に取引先の実態を確認するためにも有効な手段となります。
会社登記の手続き
会社登記を実施する際には様々な手続きが必要となります。
なお、会社の設立には下記の2種類があります。
- 発起設立:発起人が会社設立時に発行するすべての株式を引き受けて設立するもの
- 募集設立:株主となる人を募集して設立するもの
発起設立は発起人のみが資本金を出資し、会社設立まで行っていくため手続きが比較的簡単で、迅速に会社を設立することが可能です。募集設立では、会社に出資する株主を募集し、会社設立前に出資者を集めて創立総会を開催する必要があり、会社設立までの手続きがやや複雑となります。
このため、多くの場合は発起設立が活用されます。この記事でも一般的な会社設立方法である発起設立について解説します。
会社の概要を定める
まず最初に会社の概要を定めます。主な項目は下記のとおりです。
- 商号(社名)
- 本店所在地
- 発起人
- 取締役
- 取締役会と監査役の有無
- 事業目的(事業内容)
- 資本金
- 事業年度
- その他主要項目
本店所在地によって法務局の管轄が変わるため、後々の手続きや運営を考慮し、本店の所在地を確定させることがポイントです。
類似商号や事業目的の適否を確認する
(新)会社法により、同一所在地に同一の商号は登記できません。一方、旧商法での類似商号規制は廃止されたため、他人が登記した会社と同じ事業内容であっても、同一市区町村に登記が可能となりました。
ただし、不正目的や誤認によって先行する会社に不利益が生じた場合、不正競争防止法等に基づいた係争になる可能性があるため、会社設立前に類似商号の調査は必須項目です。
また、会社設立後に行う事業内容を事業目的として明確にする必要があります。事業目的は違法であったり漠然とした内容のものは認められないため、適法かつ明確であることが重要です。
法人用の印鑑を作成する
会社を設立した後、代表者個人の印鑑ではなく、会社としての「法人実印」が必要となります。法人実印を作成する際には、今後の会社運営を考慮し、銀行印、社印、ゴム印(社名や所在地、電話番号、代表者名などを記載)も同時に作ることが現実的です。
印鑑証明書を取得する
会社の設立には印鑑証明書も必要となるので、事前に取得しておく必要があります。印鑑証明書は発起人だけではなく、会社設立時の取締役全員のものが必要となりますが、取締役会を置く場合は、代表取締役の印鑑証明書のみを用意します。
定款を作成・認証を受ける
最も重要な作業が、会社の根幹となる定款の作成です。定款には下記の「絶対的記載事項」を明記する必要があり、それ以外は自社で記載が妥当と判断した項目を定款に加えます。
- 目的
- 商号(社名)
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額または最低額
- 発起人の氏名または名称および住所
株式会社の定款に必要な項目
- 金銭以外の財産を出資する者の氏名または名称、財産の価額、割当てる設立時発行株式数
- 会社成立後に譲り受けることを約束した財産と価額、およびその譲渡人の氏名または名称
- 会社成立により発起人が受ける報酬、その他特別の利益、およびその発起人の氏名または名称
- 会社が負担する設立に関する費用
定款は公証役場で認証された後に有効となります。公証役場での手続きには5万円の認証費用と謄本交付手数料(1枚あたり250円)が必要となります。
資本金を払い込む
定款の認証終了後、出資金を銀行口座に振込みます。振込んだ後には、銀行通帳の表紙と裏表紙、出資金の入金が記帳された箇所それぞれのコピーを取り、資本金が振込まれたことを証明する「払込証明書」を作成し、法人実印を押印します。その際、捨印を押印することで書類に誤りがあった場合に修正が容易となります。
なお、会社名義の銀行口座は会社設立後でなければ開設できないため、出資金は発起人の個人口座に振込むこととなります。不動産や自動車などの「現物出資」を行う場合は、その旨を定款に記載した上で、財産引継書や現物出資の調査報告書といった書類を作成した後に登記申請を行います。
法務局へ登記申請する
本店所在地の管轄法務局に登記申請を行います。書類に不備がない場合、登記申請から7~10日程度で会社登記は完了となります。
会社登記に必要な申請書類
会社登記に際して必要となる申請書類は下記のとおりです。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書
- 取締役の就任承諾書
- 代表取締役の就任承諾書
- 監査役の就任承諾書
- 役員の印鑑証明書(*)
(*)取締役会を設置している場合、代表取締役以外の取締役・監査役は住民票でも可能です。
- 資本金の払込を証明する書類
- 印鑑届出書
- 登記すべき事項を記載した書面または保存したCD-R
留意点(本店所在地)
会社を設立する場合には、会社の本店(本社)をどこに設定するかを確定させる必要があります。自宅、店舗や事務所など、どこを本店としても問題ありませんが、本店所在地は1ケ所に限定されます。
なお、マンションの場合は現実的に事業用に使用することが認められない可能性があるので、当該マンションの管理規約を確認し、事業用不可との記載があれば本店とは出来ないので留意が必要です。また、賃貸物件の場合も、管理規約ではなく賃貸借契約書における目的が住居とされている場合には本店に出来ません。
更に、許認可が必要な事業の場合には自宅兼事務所は基本的に不可能で、しっかりとオフィスを用意する必要がるので留意が必要です。
会社登記に必要となる費用
株式会社を設立する際の法定費用は、定款に関する費用と登記費用があります。
定款費用
定款には紙の定款と電子定款があり、それぞれ法定費用が異なります。
印紙代:紙の定款40,000円、電子定款なし
認証手数料:どちらも50,000円
定款の謄本:どちらも2,000円程度
登記費用
登録免許税として「資本金の金額×0.7%」が必要となります。株式会社の場合、当該金額が150,000円に満たない場合は最低150,000円となります。
合計費用
法定費用の合計は、紙の定款の場合24~25万円程度、電子定款の場合は20~21万円程度となります。
合同会社を設立する際の法定費用
株式会社に次いで申請頻度の多い合同会社の場合、こちらも定款は紙と電子があり、印紙代が40,000円、定款謄本が2,000円程度です。認証手数料は不要です。
登記にかかる費用は登録免許税で、株式会社と同様「資本金の金額×0.7%」で、60,000円に満たない場合は最低60,000円です。
法定費用の合計は、紙定款の場合10~11万円程度、電子定款の場合は6~7万円程度の設立費用となります。
最後に
会社登記について解説しました。
起業家が会社を設立する際には、やるべき手続きが多いだけでなく、定款や役員報酬など、企業を運営していく上で非常に重要となる項目も多々あるので、しっかりと準備し、慎重に進めていくことが求められます。
運営からのお知らせ