自己資金なしでも創業融資を受けられる?融資を受けるためのポイントを解説

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創業において、自己資金の準備は事業を成功させるための基本となります。特に創業融資を申し込む際には、事業への本気度を測る評価基準となるため重要です。

ただし、自己資金が十分でなくても創業融資を受けられる可能性はあります。この記事では、自己資金なしで創業融資を受けるためのポイントを詳しく解説していきます。

創業融資とは

創業融資は、事業者が新たに事業を始める際に、必要な資金を調達するために活用する融資制度です。自己資金だけで運転資金や設備投資を賄うのは難しいという場合に役立ちます。

金融機関や公的機関が提供する創業融資を活用すれば、事業の立ち上げを円滑にできるでしょう。特に日本政策金融公庫や地方自治体の制度融資は、創業者支援のための重要な資金源として多くの起業家が利用しています。

参照:日本政策金融公庫 創業融資のご案内

 

自己資金の基本的な考え方

日本政策金融公庫の創業融資では、明確な基準はないものの、事業者には原則として自己資金が求められます。というのも、自己資金は事業にどれほど真剣に取り組んでいるかを示す指標であり、資金計画の健全性を表すからです。

同公庫の調査によると、創業資金の総額に対して求められる自己資金の目安は平均して2割程度とされます。自己資金が少ない場合でも、過去の業務経験や具体的な契約状況、実現性の高い事業計画などをアピールすれば、融資が認められる場合もあります。

自己資金なしで融資を受けられる可能性は?

創業融資の審査では、自己資金を事業へのコミットメントの指標と捉えられます。そのため、自己資金がないと、審査は厳格になるのを理解しておく必要があります。

ここでは、自己資金なしで事業者が融資を受けられる可能性について見ていきましょう。

 

審査の厳格化は避けられない

自己資金がない状態で創業融資を申請すると、より厳格に審査されます。自己資金は創業者の事業に対する真剣度やリスクテイクの姿勢を示す、重要な要素と見なされているためです。

そのため、自己資金がまったくない場合、返済能力や事業の実現可能性について慎重に評価されます。さらに、近年では財政健全化の観点から、創業者は政府系金融機関の厳しい融資基準をクリアするよう求められます。

具体的には、事業計画の具体性や実現可能性、資金計画の妥当性、創業者の熱意と能力、市場性と成長性などが従来以上に厳しくチェックされるようになっています。

 

要件の緩和

日本政策金融公庫の、以前の「新創業融資制度」では、創業者は創業資金総額の1/10以上の自己資金を求められました。しかし、令和6年3月31日をもって同制度は廃止され、現行の「新規開業資金」では、自己資金に関して問われません。

加えて、新規開業資金では無担保・無保証人で申請できます。ほかにも、返済期間の延長や利率の引き下げなど、創業者は有利な条件で融資を受けられるようになりました。

そういった背景から、事業者は自己資金が少ない場合でも、事業計画の実現性や創業者の熱意を示すことで、融資を受けられる可能性が高まっています。

 

例外的なケース

現在勤務している企業と同じ業種で独立・起業する場合、業界での経験や知識が評価され、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性があります。

また、産業競争力強化法に基づく「認定特定創業支援等事業」の認定を受けて起業する場合も、自己資金がなくても融資を受けられる可能性があります。また、税制上の優遇措置なども適用される場合があります。

自己資金なしでも創業融資を受けやすくするためにできること

自己資金が不足している場合には、創業融資を受けるために他の要素で信頼性を高めることが重要です。ここでは、自己資金なしでも創業融資を受けやすくするためにできることとして、次の3つを解説します。

1. 実現性の高い事業計画書を作成する
2.
実績や契約のアピール
3. 専門家にサポートを依頼する

 

実現性の高い事業計画書を作成する

自己資金が不足している場合、実現性の高い詳細な事業計画書の作成が不可欠です。まず、収支計画や資金計画を具体的な数字で示し、事業の収益性や資金繰りの健全性を明確に伝えることが重要です。

また、市場調査の結果の記載も効果的です。市場規模や競合状況、顧客ニーズを具体的に分析して記載するとよいでしょう。

これらにより、事業の差別化ポイントや成長戦略を明確にでき、事業の実現可能性を強くアピールできます。具体的なデータや根拠を用いれば、計画の信頼性が客観性を伴って高まるでしょう。

 

実績や契約のアピール

創業融資を申請する際、既に確定している契約や取引先がある場合は、それらを積極的にアピールするのも効果的です。具体的な契約書や発注書の提示により、事業の安定性や収益性を示せます。

また、過去の売上実績や関連する業界での経験も、アピールポイントとして利用できます。たとえば、前職での業績やプロジェクトの成功事例を具体的な数字とともに提示することで、事業遂行能力を示せるでしょう。

 

専門家にサポートを依頼する

創業融資の申請に際しては、税理士や中小企業診断士などの専門家のサポートが有効です。彼らは資金調達や事業計画書の作成に関する豊富な知識と経験を持っているので、適切なアドバイスが受けられます。

専門家の支援を受けることで、融資審査における成功率を高められるでしょう。特に、事業計画書の作成においては、専門家の意見を反映させれば、計画の精度や説得力の向上が図れます。

 

自己資金なしでも申し込みできる日本政策金融公庫の創業融資制度

日本政策金融公庫は、自己資金が不足している起業家を支援するため、さまざまな創業融資制度を提供しています。ここでは、自己資金なしでも申し込みできる日本政策金融公庫の創業融資制度として、次の3つを見ていきましょう。

1. 新規開業資金
2. 中小企業経営力強化資金
3. 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

 

新規開業資金

新規開業資金は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が活用できます。この制度では、自己資金に関する明確な要件がなく、無担保・無保証人での融資が受けられます。

さらに、返済期間の延長や利率の引き下げなども期待できるでしょう。特に、女性の方、35歳未満の方、55歳以上の方など、特定の層の方々は特別利率の適用を受けられます。

また、技術・ノウハウ等に新規性が見られる方や、デジタル田園都市国家構想交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方は、さらに低利率の適用を受けられる場合があります。

参照:日本政策金融公庫 新規開業資金

 

中小企業経営力強化資金

中小企業経営力強化資金では、経営革新や新事業分野の開拓を行う中小企業が、認定経営革新等支援機関による指導や助言を通じて支援を受けられます。

また、融資限度額は7億2千万円と高額で、設備資金は20年以内、運転資金は7年以内の返済期間で借入できます。

さらに、「中小企業の会計に関する基本要領」や「中小企業の会計に関する指針」を適用している方は、特別利率が適用される場合があります。

なお、独立行政法人中小企業基盤整備機構によるハンズオン支援を受けている方や、取引金融機関の支援を受けて経営者保証免除計画を策定し、経営改革に取り組む方もこの制度を利用できます。

参照:日本政策金融公庫 中小企業経営力強化資金

 

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、日本政策金融公庫が提供する融資制度で、自己資本の充実を図ることを目的として利用できます。

この制度は、事業計画の策定支援を実施した民間金融機関からの融資額が、原則として必要資金の2分の1を超える場合に適用されます。

また、融資期間は15年以内(据置期間5年以内)で、劣後ローンとして取り扱われるため、財務上は自己資本としてカウントできます。

参照:日本政策金融公庫 挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

 

自己資金がない場合は事前相談をしよう

各融資制度には特有の要件や手続があるため、個別に事前相談を利用するのは有効的です。

日本政策金融公庫では、創業に関する無料相談を実施しており、創業者は個別の状況に応じたアドバイスを受けられます。

また、地域の商工会議所や中小企業支援センターなどでも、創業支援や資金調達に関する相談窓口が利用できます。これらを活用すれば自己資金がない場合でも、適切な支援策や融資制度を見つけやすくなるでしょう。

まとめ

事業を始める際に自己資金がない場合でも、創業融資を受けるための方法や制度は充実しており、適切な準備と制度の活用が事業者には重要です。特に、実現性の高い事業計画書や確定済みの契約の提示、あるいは実績を融資審査で役立てましょう。

日本政策金融公庫の新規開業資金や資本性ローンなど、多くの融資制度が、自己資金は少なくても申し込みできます。自己資金がない場合でも事前相談のうえで、周到に準備して申請すれば、資金調達の成功に近づけるでしょう。

 

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