株式上場とは?段取りと市場の概況、メリット・デメリット、留意点は

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起業し、株式会社を経営しながら事業を順調に拡大させた後、将来的に株式上場を目指す事業者も多いことでしょう。

株式を上場すると、社会的な信用度は一層高まり、また多額の資金を調達することが可能となるため、事業の発展が期待できる一方、リスクや留意点もあります。

株式上場について解説します。

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株式会社の概況

株式会社とは、株主から有限責任で資金を調達し、委任を受けた経営者が事業を行って利益を株主に配当する会社形態の1つで、社会貢献と営利を目的とする団体です。

経済産業省の統計データ(平成28年)によれば、全国の株式会社数は約386万社となっています。

参照:経済産業省(経済センサス)

また、直近で株式上場させている企業は合計で3,786社となっています。

参照:JPX(日本取引所グループ)

株式を上場するには

将来の事業拡大へ向けて株式会社を設立し、上場を目指す方法について解説します。

株式上場とは

株式上場とは、企業が発行する株式を証券取引所で売買できるよう、証券取引所が資格を与えることを指します。

上場を果たした企業は、円滑かつ潤沢な資金調達が可能となり、また社会的信用や知名度の向上といったメリットが生まれます。その一方、上場を維持するために運営コスト負担が増加したり、社会的責任も増大するという負担も生じます。

株式上場により、当該企業が保有する株式は日本国内だけでなく、世界中の投資家が売買出来るため、証券取引所では投資家保護の立場から、株式が様々な投資家が売買を行う対象としてふさわしいかどうかについて審査を行います。

上場審査

証券取引所が定める基準(上場審査基準)には次の2つがあります。

形式基準

上場する企業の株式数や株主数、利益の額といった、具体的な数値に基づき形式的に定められた基準

実質基準

企業内容などの情報を適切に発信することができる状況にあるかどうか、事業を公正かつ忠実に遂行しているかどうか、などを実質的に判断する基準

株式公開のステップとスケジュール

株式公開にあたって必要な時系列のステップとスケジュールは次のとおりです。

ステップ

上場へのステップは次のようになります。

  1. 株式公開の検討
  2. 株式公開プロジェクトチームの設置(公開準備室)
  3. プロジェクトリーダー決定(社長または管理部門取締役)
  4. 社内体制強化
  5. 監査法人・主幹事証券会社の選定と依頼
  6. 事前審査
  7. 証券取引所・日本証券業協会に上場申請
  8. 上場

スケジュール

株式を上場するためは、前述の上場審査手続きが必要です。上場申請〜審査が完了するまでの期間は、東証上場の場合3か月、マザーズやJASDAQの場合2か月が目安となります。

準備期間を3年(3期)とした場合のスケジュールについて解説します。

申請3期前~2期前

監査法人が上場に向けて予備調査を実施します。
上場に向けた問題点を洗い出し、改善策を検討する必要があります。

申請2期前

申請直前2期分の公認会計士、または監査法人の監査証明が必要となります。
内部監査によって状態を確認し、迅速に修正できる体制を整えることがポイントです。

申請~審査

取引所で審査を受けるには、「主幹事証券会社」の審査および推薦を受ける必要があります。
主幹事証券会社は、東証からの質問事項へ回答し、ヒアリング実施後、全てに適合すれば審査が完了します。

上場先である4つの株式市場とは

現在、国内の証券取引所で取り扱われる様々な商品のうち、株式の売買を行う市場を「株式市場」と呼びます。
株式市場で代表的なのは以下4つの市場です。

  • 東証第1部
  • 東証第2部
  • 東証マザーズ
  • JASDAQ

それぞれの特徴について簡単に解説します。

東証第一部

東証第一部と東証二部とは、どちらも東京証券取引所のことです。
東証第一部は、数多くの項目で一定の基準を満たした優良企業のみ上場対象となります。

東証第二部

東証第二部は東証一部よりも上場審査が易しく、例えば東証一部では株主数が2,200人以上であることが条件ですが、東証第二部では800人以上で申請可能となります。
多くの企業は、東証第一部での上場に向けたステップとして、東証第二部での上場を目指します。

東証マザーズ

ベンチャー企業が比較的多く、今後の成長や拡大が期待される事業、また新技術開発を行う企業などが多く取り扱われている株式市場です。

JASDAQ

ベンチャーと老舗企業が併存しており、ある程度実績がある企業や、安定性のあるベンチャー企業などが取り扱われている株式市場です。

詳細については下記をご参照ください。

参照:日本証券取引所グループ

なお、福岡、名古屋、札幌にも証券取引所がありますが、詳細は割愛します。

株式上場のメリット・デメリット

株式上場は経営者にとって夢の実現であり、また多様な経営上のメリットを獲得し、事業を拡大する手段でもあります。

その一方、株式の買い占めによる他者からの乗っ取りの可能性や、事務量やコストが増大するといったデメリットも存在します。

株式上場のメリットとデメリットについてみていきます。

メリット

株式上場の基本的なメリットについて解説します。

社会的信用度の向上と事業資金や人材確保につながる

上場審査を通過したことによる信頼性の向上と『上場企業』というネームバリューを獲得でき、会社の知名度が向上します。それに伴って事業資金の調達も容易となり、優秀な人材も集まります。

創業者利益が増大する

株式上場により、株式を市場で売却することで創業者利潤が確保できます。また、ストックオプションなどを利用することで、キャピタルゲインを従業員にも還元できます。

上場準備に伴う経営体制の見直しができる

上場の審査基準は厳格に設けられているため、その基準をクリアするために自社の経営体制や社内環境の改善を行うという結果につながります。

一族経営の場合に株式の現金化が容易

上場株式は市場で誰でも売買が可能なため、相続などでまとまった資金が必要になった際に、保有株式を市場で売却することで比較的容易に現金化が可能です。

デメリット

次に、株式上場の基本的なデメリットについて解説します。

社内体制の整備に時間がかかる

株式上場の際には、上場審査のために社内体制の整備が必要になります。そのため、監査役会や会計監査人の設置、上場プロジェクトチームの組成、外部専門家によるサポート、証券会社の審査対応など、準備に時間がかかります。

上場に伴う継続コストが必要

年間上場料をはじめ、株式上場の維持費用、例えば監査報酬、株式事務代行手数料など、上場維持費用が必要となります。

株主からの経営関与

株式上場すると、株主の声が無視できなくなります。一般的に投資家はキャピタルゲインを得ることを目的に株式を所有するため、中長期的な経営計画は描きにく、経営方針の自由度が奪われる可能性もあります。

社会的責任と買収のリスク

上場した後は、会社情報の開示制度などによって社会的責任が問われるため、コーポレートガバナンスに関して求められることも多くなります。また、株式が公に取引されるため、他者からの買収により経営権を奪われるリスクも発生します。

留意点

株式を上場すると、企業としての業務や遵守すべき法令の拡大や、株式の買い占め・乗っ取りの可能性など、上場前とは異なるリスクや負担が増加します。

上述したデメリットとも重なりますが、主な留意点について解説します。

企業内容の開示義務

上場会社には、決算発表、有価証券報告書、四半期報告書などの企業内容をタイムリーに開示し、内部統制の充実を図ることが求められます。

事務量の増大

上場に伴う経理事務、株式事務、株主総会の運営など、事務量が増大します。

株式の買占めや乗っ取りなどの可能性

デメリットで記載のとおり、上場によって株式の買占めや乗っ取りなどの可能性が出てくるので、これを防止するために平時の買収防衛策や安定株主対策など検討が必要です。

遵守すべき法令等の拡大

株式上場により、会社法以外にも金融商品取引法、証券取引所の定める規則など、遵守すべき法令が拡大します。

社会的存在としての認識の要請

上場会社は、企業が社会的存在であるという認識がより強く求められます。同族企業でありがちな私的な不動産賃貸借などの取引は、原則的に解消する必要があります。

最後に

株式上場による大きなメリットや意義がある一方、デメリットや留意点についても解説しました。

一方、現状では上場を最終ゴールとし、創業者利益を目的とした上場が増えたことで、株価が急落する場合も散見されます。

企業にとって株式上場はゴールではなく、自社の事業発展に向けた通過地点として捉え、経営に注力いただきたいものです。

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