アセットファイナンスとは? 主な手法・メリット・デメリットを解説

公開日 2025/07/03
更新日 2025/07/03
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企業が成長や事業拡大を目指す中で、資金調達は避けて通れない課題です。多くの企業は従来型の融資や株式発行によって資金を確保してきましたが、近年ではより柔軟な選択肢としてアセットファイナンスが注目を集めています。

アセットファイナンスは、企業が保有する資産を活用して資金を調達する方法で、資産の有効活用や財務戦略の多様化に寄与します。この記事では、アセットファイナンスの主な手法やメリット・デメリットについて解説していきます。

アセットファイナンスとは?

アセットファイナンスとは企業が保有する資産を活用して資金を調達する手法です。不動産や機械設備、車両、有価証券、知的財産権、売掛債権などの資産を担保に、必要な資金を確保します。

 

アセットファイナンスとコーポレートファイナンスの違い

企業全体の信用力に依存せず、特定の資産の価値に基づいて資金調達を行うので、創業間もない企業や中小企業でも、価値ある資産を保有していれば資金調達が可能となります。

一方、比較されることが多いコーポレートファイナンスは、企業全体の信用力を基に資金を調達する方法です。金融機関からの融資や社債・株式の発行などが含まれ、企業の財務状況や業績が資金調達の可否に大きく影響します。

アセットファイナンスの主な手法

アセットファイナンスの主な手法として、以下の3つをご紹介します。

1. ファクタリング

2. ABL(Asset Based Lending)

3. リースおよびセール・アンド・リースバック

ファクタリング

企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を早期に現金化する資金調達方法です。取引先からの入金を待たずに資金を確保でき、キャッシュフローの改善に役立ちます。

売掛債権を担保に融資を受けるのではなく、売却して現金化する点が特徴です。担保や保証人が不要で、迅速な資金調達が可能となります。

 

ABL(Asset Based Lending)

在庫、機械設備、売掛金などの事業資産を担保として活用する融資手法です。資産の価値に基づいて融資額が決定されるため、信用力が低い企業でも、担保となる資産の評価が高ければ資金調達が可能な場合があります。定期的な資産評価が行われ、担保資産の状況に応じて融資枠が変動する「動態的担保管理」に特徴があります。

ABLにおける『動態的担保管理』は、主に在庫や売掛金といった流動資産を担保とする場合に適用されるのが一般的です。一方で、機械設備などの固定資産を担保とする場合は、定期的な再評価を行う静態的な管理が主となるため、資産の種類に応じた管理手法の違いを理解しておくことが重要です。

 

リースおよびセール・アンド・リースバック

リースは、金融機関やリース会社が購入した設備や機械を企業が一定期間借り受ける資金調達手法です。多額の初期投資を抑えつつ必要な資産を利用でき、リース料を経費として計上できるため、節税効果も期待できます。リースには、契約期間満了後に所有権が移転するファイナンス・リース(所有権移転型)と、期間終了後に返却が前提となるオペレーティング・リース(賃貸借型)があります。

また、セール・アンド・リースバックは、企業や個人が保有する不動産や設備などの資産を売却し、その後リース契約を結ぶことで引き続き利用する手法です。資産を手放さずに資金を確保でき、業務を継続しながら資金調達が可能となります。ただし、リース契約の条件によっては、将来的に資産を返却しなければならない場合もあるため、契約内容を十分に理解することが重要です。

 

アセットファイナンスのメリット

アセットファイナンスには、主に以下の4つのメリットがあります。

1. 資金調達の容易さ

2. 事業投資の機会

3. 資金使途の柔軟性

4. 企業価値の向上

資金調達の容易さ

アセットファイナンスは企業の信用力に依存しないため、担保さえあれば迅速かつ柔軟な資金調達が可能です。従来の融資が難しい場合でも資金を得ることができます。

さらに、資産を活用することで負債を増やさずに資金調達が可能となり、財務体質の改善にも有効です。

 

事業投資の機会

アセットファイナンスを活用した資金により、新たな事業投資へのチャレンジが可能となります。成長分野への参入や設備投資を促進し、企業の競争力を高めることが期待できるでしょう。

 

資金使途の柔軟性

アセットファイナンスを活用して調達した資金は、成長戦略や新規事業の立ち上げなど、多岐にわたる用途に柔軟に活用できます。

さらに、資金調達手段の多様化により財務戦略の柔軟性が向上し、企業は市場環境の変化に迅速に対応することが可能です。

 

企業価値の向上

アセットファイナンスで保有資産の売却し、現金化することでバランスシート上の資産項目を減少させ、現預金の増加が図れます。自己資本比率やROA(総資産利益率)が向上します。

特にセール・アンド・リースバック等の手法を活用すれば、資産を売却しても引き続き使用権を保持できるため、事業継続性を維持しながら財務指標を改善することができます。

さらに、資産売却によって得た資金を新たな投資や事業拡大に充てることで、収益性を高めることも可能です。

アセットファイナンスのデメリット

一方、アセットファイナンスには主に以下の4つのデメリットもあります。

1. 額の制限

2. 財務リスクの増大

3. 資産喪失のリスク

4. 短期的視点への偏り

借入額の制限

アセットファイナンスにおいて、調達可能な金額は保有資産の価値に依存するため、資産の価値が低い場合や適切な資産を保有していない場合、期待するほどの資金を調達できない可能性があります。

また、資産を担保に提供することで、他の資金調達手段に利用可能な担保が減少し、将来的な資金調達の柔軟性が制限されかねません。

 

財務リスクの増大

アセットファイナンスを活用して資金調達を行う際、負債比率が高まると、景気変動や金利上昇により返済負担が増加し、資金繰りが厳しくなる可能性があります。

さらに、負債比率の上昇は倒産リスクの増大や利益の減少、資金調達の制約など、企業の財務状況に悪影響を及ぼす可能性にも注意が必要です。

 

資産喪失のリスク

アセットファイナンスを活用後に返済不能に陥った場合、これらの担保資産が債権者によって差し押さえられ、企業は重要な資産を失うリスクがあります。

資産を失うことで、企業の事業運営や収益性に深刻な影響を及ぼしかねません。主要な生産設備や不動産を失うと、事業の継続そのものが困難になるケースも考えられます。

 

短期的視点への偏り

アセットファイナンスを活用する際、財務指標の分析に頼りすぎると、短期的な利益を優先するあまり長期的な競争力を損なうリスクがあります。

さらに、短期的な視点に偏ると、経営の柔軟性が制限される可能性も否定できません。長期的な視野を持たない資金調達戦略が、結果的に企業の持続的成長を阻害する要因となり得るからです。

アセットファイナンスが有効的な企業

アセットファイナンスは、企業が保有する資産を活用して資金調達を行う手法であり、特定の条件を満たす企業にとって特に有効です。

ここでは、アセットファイナンスが有効とされる企業の特徴を挙げておきます。

 

高価値の資産を保有する企業

不動産や高額な機械設備などの価値の高い資産を所有している企業は、これらを担保に資金調達が可能です。

 

迅速な資金調達が必要な企業

銀行融資よりも短期間で資金を得られるため、急な資金需要が発生した場合に検討の価値があります。

 

信用力に不安がある企業

業績が悪化している企業や創業間もない企業などの信用力に不安がある場合でも、保有資産の価値を評価されれば資金調達を受けられる可能性があります。

 

成長段階にある中小企業

事業拡大のための資金需要がある一方で、従来の銀行融資では十分な資金を調達しにくい成長段階の中小企業にとって、アセットファイナンスは有効な選択肢となります。

 

季節的な収益変動がある企業

季節によって収益が大きく変動する業種(例:観光業、農業関連など)では、オフシーズンの運転資金確保にアセットファイナンスが活用できます。

 

財務体質の改善を目指す企業

バランスシートの改善や財務指標の向上を目指す企業にとって、特にセール・アンド・リースバック等の手法は効果的です。資産を売却しながらも使用権を維持できるため、事業継続性を確保しつつ財務改善が可能です。

上記のような特徴を持つ企業はアセットファイナンスを活用することで、柔軟かつ効果的な資金調達の実現が期待できます。

まとめ

アセットファイナンスは企業の信用力よりも保有資産の価値を重視する資金調達手法です。迅速な資金調達や返済義務のない資金獲得が可能です。

不動産や売掛債権などの有効活用で、資金繰りの改善や財務体質の強化に寄与します。ただしデメリットもあるので自社の状況や資産内容を踏まえ、最適な資金調達手法を選択するのが望ましいでしょう。

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