起業家が新たに事業を志す場合、その多くはプラットフォームとして株式会社の設立を検討します。
株式会社を設立する際には、様々な手続きや費用が必要になりますが、事業を円滑に推進・拡大させるためには重要なプロセスであり、また多くのメリットも期待できます。
これについて詳しく解説します。
会社の種類
新会社法による会社の分類
商法改正の一環として2006年5月に施行された、いわゆる「新会社法」制度下では、新たに設立できる会社の種類は下記の4種類とされています。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
なお、これまで多くみられた形態である有限会社は「特例有限会社」とされ、同法上は株式会社として扱われます。上記4つの会社は、以下の2点から分類されます。
- 株主などの出資者が負う責任の態様
- 会社の内部組織の構成
重要なのは債務に対する社員(株主などの出資者)が負う責任の態様です。これは、会社の債権者に対して社員(株主などの出資者)がどのような責任を負うかという点で、出資者が債務に対して無限責任を負っているか、有限責任を負っているがの違いとなります。
株式会社の場合は有限責任となります。有限責任とは、自身が出資した金額の範囲内での責任に留まることを意味します。無限責任とは、会社が蒙(こうむ)った損失に対して、自己出資額の範囲を超えて追求されるものです。
株式会社とは
株式会社は、株式を発行し、資金を集めて運営される、代表的な会社の形態です。
株式会社の最大の特徴は、出資者と経営者が異なることです。出資者は株主と呼ばれ、会社を所有するオーナーとして位置付けられます。その株主たちが株主総会を開き、選任された代表者がが経営者として事業を運営します。
出資者の責任範囲は上述のとおり有限責任で、出資した範囲のみでビジネスに対して責任を負うため、外部から投資されやすくなります。また、株式会社には決算公告が義務づけられており、株主や債権者に対して会社の経営状況や財務状況を明らかにすることが求められます。。
新会社法では発起人が1人以上、資本金も0円や1円から設立できることとなり、従来に比べると格段に制約は減りましたが、他の会社に比べると依然として制約が多いのも事実です。例えば、会社設立時には会社の根本的な事項を定めた定款を作成し、公証人の認証手続きを行う必要があり、合同会社や合名会社、合資会社にはない制約です。
株式会社のメリット・デメリット
株式会社のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
株式会社を設立する主なメリットとしては、社会的信用度、税金、経費の3点が挙げられます。
社会的信用度・知名度が向上する
株式会社を設立する際には法務局に登記する必要があり、会社謄本が作成されます。その後は新会社法をはじめとする法規制を受けることとなるため、個人事業と比べて社会的信用度が高いとされます。
社会的信用度が高ければ、金融機関からの融資が受けやすくなったり、他の会社との取引が拡大したりというメリットが発生します。さらに、知名度も向上します。
税金の優遇制度が得られる
法人と個人事業主では納める税金が異なりますが、個人の場合は所得税が累進課税方式のため、税金が高くなる傾向があります。
その一方、法人税にはさまざまな優遇制度があり、節税がしやすいというメリットが得られる上、赤字の場合には欠損金を繰り越せる制度もあります。
経営者の給料などが必要経費として扱える
株式会社の場合、借入金の返済や固定資産の購入を除く支出は、経営者自身と家族の給料などが経費として処理できます。
大規模な運金調達と運営が可能
資本金や資産などを担保として、金融機関から多額の資金調達を受けることが可能です。このため、一定規模の事業運営が可能となります。
デメリット
デメリット項目について挙げておきます。併せて参考としてください。
- 会社設立時のコストが他の種類と比べて高額である
- 役員任期があり、その都度更新・登記が必要
- 登記を放置しておくと抹消リスクがある
- 法律で様々な規制・制約がある
株式会社における資本金の考え方
資本金とは、株式会社をスタートさせる際に必要となる運転資金です。
制度上、金額を自由に設定することが可能ですが、過小な金額で事業を運営するのは現実的に無理があります。
資本金の目安は「1,000万円未満」
この金額は新会社法制定以前の基準ですが、根拠もあります。
これについて解説します。
設立初年度から最大2年間消費税が免除
資本金を1,000万円未満に設定することで、消費税の納付が最大2年間免除されます。
法人住民税均等割の納税額が最低限
会社が地方自治体に納税する地方税を法人住民税は呼ばれ、赤字の場合でも納付の義務があります(「均等割」)が、従業員が50人以下のの場合、資本金が1,000万円未満であれば納付額が最低額の7万円となり、1,000万円以上の納付額(18万円)と比べると11万円安くなります。
少なすぎる資本金のリスク
株式会社を設立した直後は収益がなく、運転資金や設備費、人件費などの費用が先行します。
資本金が少ない会社は経営が不安定で、外部からみれば安心して取引を行えないと思われ、取引や契約を得ることが難しくなってしまうリスクがあります。また、金融機関からの融資を受ける際にも、資本金が多い会社の方が一般的に有利となります。
株式会社設立の手順
株式会社を設立する際に必要となる手続きは以下のとおりです。
発起人の決定
発起人は」会社設立の発案者および賛同者」であり、登記を完了するまで一切の手続きを進めていく人物のことを指します。
商号の決定
会社の商号(社名)を決定します。
基礎事項の決定
会社の種類や規模に関わらず、会社の基本事項を確定させます。
事業内容や本店所在地、資本金の出資額、役員報酬や会計年度、株式の発行条件などが該当します。
代表者印の作成
登記の際に代表者印の届出が必要となるため、商号決定の後に会社代表者の印鑑を作成します。
定款の作成・認証
定款とは、会社を運営していく上での基本事項を定めたもので、「会社の憲法」にあたる重要なものです。
出資の履行
定款の認証が終わった後は、金融機関に対して資本金の全額を払い込みます。
登記申請
設立登記申請書を作成の上、登記申請します。
株式会社設立にかかる費用
株式会社設立に必要な費用は以下のとおりです。電子申請の場合は合計で202,000円となります。
- 定款認証手数料:50,000円
- 定款印刷代:40.000円(電子定款の場合は不要)
- 定款謄本手数料:2,000円
- 登録免許税:150,000円
最後に
株式会社を設立するメリットや手続きなどについて解説しました。
自社の事業運営を円滑に推進する上では、様々な困難もありますが、しっかりと準備して進めれば長期にわたって大きな利益が期待できます。
必要な流れを確認し、資本金を準備したうえで、株式会社設立の手続きを実行していただきたいものです。
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