起業を志し、自分のやりたい事業を行う際には、プラットフォームとしての受け皿、すなわち「会社」を設立して社会的信用を得たいと考える事業家は多いことでしょう。
会社を設立する際に選択すべき種類や、必要となる費用、また資金調達の方法と補助金の活用などについて詳しく解説します。
会社とは
会社とは、事業を展開することによって利益を出し、儲けることを目的に設立され、経済活動を行っている存在のことを指します。
平成17年に制定された(新)会社法によれば、株式会社や持ち株会社といった「責任の持ち方」によって、会社の種類がそれぞれ分類されています。
事業をするために出資した人の集団である民間法人は、事業を行い、利益を出していくことを目的としています。一方、公益法人や官公庁などの事業体は「非営利法人」と呼ばれ、非営利の活動を目的としています。また、社会貢献やボランティアなど、市民団体として設立されている「NPO」も非営利法人として挙げられます。
なお、国税庁の統計によれば、2019年時点での会社数は合計で約270万社となっています。
参照:国税庁
会社の種類
会社法では、設立できる会社の種類は現在次の4種類となっています。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
なお、従来から数多く存在していた有限会社は、会社法の施行以後、設立が認められていません。会社法の施行前までに有限会社として存在した会社のみ「特例有限会社」としてそのまま有限会社を名乗ることができますが、会社法上は株式会社として扱われます。
上記の4種類の主な違いについて解説します。
株式会社
最も一般的で、多数を占める会社形態です。
株式会社では、株式を発行することで資金調達し、その資金を事業活動に充てて活動します。
最大のメリットは社会的な信用度が高いことです。このため、融資や助成金の面で優遇されることが多く、ビジネスチャンスも拡大します。
株主などの出資者が負う債務は有限責任(出資額以内)であり、一方、債権者が担保とできるのは会社財産だけです。
合同会社
経営者と出資者が同一で、出資者全員が有限責任社員として会社の経営に携わります。
設立コストの安さと簡便さが大きなメリットです。社会的信用度は株式会社に比べると劣るため、資金調達や契約などの際に不利になるケースも少なくありませんが、世界的に著名な大企業でも合同会社の形式を取っているケースが見受けられます。
合資会社
会社の債務に対して無制限に責任を負う「無限責任社員」と、上述の有限責任社員が各1名以上、合計2名以上で構成される会社です。
株式会社や合同会社は1人でも設立できますが、合資会社の設立には最低でも2人が必要です。経営が失敗したときの責任は無限責任社員がすべて負うことになり、大きなリスクが伴うため、あまり活用されていません。
合名会社
上述の無限責任社員1名だけで構成される会社形態です。
経営が失敗したときの責任は合資会社同様、設立者個人がすべて負うリスクがあります。新会社法の施行以降は合資会社と同様、あまり採用されていません。
設立にかかる費用
会社設立に際して必要な最低限の費用について確認します。
登録時の費用
登録時に必要となる費用は次のとおりです。
株式会社
- 登録免許税15万円~
- 定款認証5万円
- 印紙4万円
合同会社・合資会社・合名会社
- 登録免許税6万円~
- 定款認証不要
- 印紙4万円
資本金
必要となる資本金については、新会社法下で大きく緩和されました。株式会社・合同会社の場合は1円以上、合資会社・合名会社では規定なしと、起業にあたっての問題にはなりません。
資金調達の方法
会社設立に当たって最低限必要となる費用に加え、実際に企業を運営する際には、一定程度の規模に上る金額を準備する必要があります。
資金調達の方法について解説します。
自己資金を準備する
起業する際には、自己資金で行うのが最も堅実かつ安全です。
自己資金であれば返済の必要もなく、思い切って事業に集中することができます。仮に事業が失敗した場合でも、借金がなければ早く立ち直ることが可能です。
他人資金を活用する
起業時の他人資金には、借入(借金)、出資・投資、公的援助(補助金・助成金)の3種類があります。
借入
借入の場合、通常は民間金融機関を想定しますが、創業(起業)の際には社会的信用や実績がないため、借入を行うのは困難です。
このため、家族や親戚などの身内や、中小企業・個人事業主うを支援する政府系金融機関である日本政策金融公庫、また、国や都道府県、市町村の創業支援制度など、借りやすいところから借りることを検討すると効率的です。
出資・投資
いわゆる「エンジェル投資家」など、出資や投資として資金の援助を仰ぐ方法があります。
公的援助(補助金・助成金)
国や地方自治体などの公共機関から支給される補助金や助成金を活用する方法です。
補助金の活用について
上記に挙げた中で、創業時に活用できる主な補助金について取り上げて解説します。
詳細についてはそれぞれのサイトなどをご確認ください。
創業支援等事業者補助金
- 対象:新たに創業を予定する者
- 補助率:補助対象経費の3分の2以内
- 補助額:1,000万円(下限50万円)
※公募期間は終了しています。本年度の方針に関しては、必ず公式サイトをご確認ください。
小規模事業者持続化補助金
- 対象:卸売業・小売業・サービス業・製造業など、従業員数5名以下(製造業は20名以下)の小規模事業者
- 補助率:補助対象となる経費の3分の2以内
- 補助額:上限50万円以内(複数の事業者が連携して取り組む共同事業の場合は50~1,000万円)
キャリアアップ助成金【正社員化コース】
- 対象:6ヵ月以上雇用実績のある契約社員・パート社員を正社員に登用し、さらに6ヵ月継続雇用した場合
- 支給金額:該当者1人につき最大72万円
地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】
- 対象:地域の特産品や観光資源を活用した事業など、地域コミュニティへ貢献度が高い新規事業開発を行う企業
- 支給金額:各都道府県のファンドにより異なる
*上記の他にも、各年度の予算によって新しく生まれる助成金や補助金のほか、金融機関や財団法人などが単発で募集しているものもあるので、こまめに情報をチェックすることがポイントです。
資金調達に際しての留意点
起業する際に必要な資金調達に際しての留意点について、改めて整理します。
- 自己資金中心とする場合は、リスクがない反面、そもそも一定の金額を事前に準備するハードルの高さが挙げられます。
- 他人資本に依存する場合、借入した金額には利息を含めて必ず返済する責務が生じるので、しっかりとした返済計画が求められます。
- 出資・投資を仰ぐ場合には、経営上の第三者からの影響力を受け入れる必要があります。
- 補助金や助成金を活用する際には、資格要件や期間などの様々な条件を確認し、万全の準備を整えることが大切です。
どの方法を選択しても、それぞれのハードルやリスクがあるので、最適な方法について検討する必要があります。
最後に
会社設立に関して、どのような選択肢があり、資金調達にはどのような方法があるのか、また留意点やリスクについて解説しました。
起業にチャレンジする場合、大きな課題もありますが、希望もあり、それを支援する機関や様々な手法があります。自分の考え方や方向性に適した方法について、しっかりと検討していただきたいと思います。
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