M&Aプロアドバイザーによるスピード査定 M&A
050-3176-6656
営業時間 10:00-12:00 / 13:00-17:00
この記事は約8分で読めます。

グローバル化が進む現代、企業の成長戦略として「クロスボーダーM&A」が注目されています。クロスボーダーM&Aは、新たな市場への迅速な参入や技術・人材の獲得など、企業に多くのメリットをもたらす手法です。

ただし、文化や法制度の違いから生じる課題も存在するため、成功には綿密な戦略と準備が求められます。この記事では、クロスボーダーM&Aの概要や具体的な手法、メリット、成功事例について解説します。

クロスボーダーM&Aとは?

クロスボーダーM&Aとは、国境を越えて行われる企業のM&A(合併・買収)を指します。

具体的には、M&A取引の当事者のうち、譲渡企業または譲受企業のいずれか一方が外国企業である場合、クロスボーダーM&Aに該当します。

この手法は新たな市場への迅速な参入や技術、人材の獲得を目的として、多くの企業で活用されています。

クロスボーダーM&Aの3パターン

クロスボーダーM&Aには主に3つのパターンがあり、各パターンは取引の主体や目的に応じて異なる特徴を持ちます。その理解はグローバルな事業展開を検討する企業にとって欠かせません。

1. IN-OUT取引
2.
OUT-IN取引
3.
JV型

 

IN-OUT取引

IN-OUT取引は、国内企業が海外企業を買収または合併する形態のクロスボーダーM&Aです。

例えば、日本企業が海外の有力ベンチャー企業を買収するケースがIN-OUT取引に該当します。国内企業にとってIN-OUT取引の主な目的は、海外市場への迅速な進出や現地の技術・ノウハウの獲得です。

 

OUT-IN取引

OUT-IN取引は、海外企業が日本国内の企業を買収または合併する形態のクロスボーダーM&Aです。

例えば、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が日本のシャープを買収した事例がOUT-IN取引に該当します。海外企業にとってOUT-IN取引の主な目的は、日本市場への円滑な参入や日本の技術・ノウハウ獲得です。

参照:日本経済新聞 シャープと鴻海精密工業、買収契約に調印

 

JV型

JV型(ジョイントベンチャー型)は、日本企業と海外企業が共同で新会社を設立し、協力して事業を展開する形態のクロスボーダーM&Aです。

例えば、トヨタ自動車と米国のゼネラル・モーターズ(GM)が共同で設立したNUMMI(New United Motor Manufacturing,Inc.)などが該当します。

JV型は双方の強みを活かし、新市場への参入や技術開発を行う際に有効です。

参照:トヨタ自動車株式会社 NUMMIの設立

クロスボーダーM&Aの手法

クロスボーダーM&Aの主な手法として、以下の2つが挙げられ、取引の目的や関係企業の状況に応じて選択されます。

株式譲渡
三角合併

 

株式譲渡

株式譲渡は、一般的なM&Aにおいても最もよく見られる手法です。買収企業は対象企業の株式の取得を通して、経営権を獲得します。

株式譲渡の大きなメリットは、対象会社の状況を変えることなく、そのままの状態で譲受でき、手続きが比較的簡便である点です。

ただし、会社全体の譲渡を受けることになるため、潜在的なリスクを遮断できないというデメリットも存在します。そのため、デューデリジェンスなどの事前調査が重要です。

デューデリジェンスについては「デューデリジェンス(DD)とは? M&Aにおける目的・種類・手順・注意点を解説」の記事も参考にしてみてください。

 

三角合併

三角合併は、海外企業が日本企業と直接合併できない場合に用いられる手法です。具体的には、海外企業がまず日本に100%子会社を設立し、その子会社を通じて日本企業と合併を行います

合併の対価として、子会社となる会社の株主に、親会社となる海外企業の株式が交付されるのが一般的です。海外企業は直接的な資金の支出を抑え、自社の株式を対価とすることで、資本効率を高められます。

クロスボーダーM&Aのメリット

クロスボーダーM&Aの主なメリットは、次のとおりです。

・スピーディーな海外進出
・市場シェアの拡大
・グローバルプレゼンスの向上
・新技術の獲得
・人材とネットワークの獲得

 

スピーディーな海外進出

既存の海外企業を買収すれば、新規市場へ迅速に参入できるというメリットがあります。

自社でゼロから現地法人を設立し、事業を立ち上げる場合、時間とコストがかかりますが、既存の海外企業を買収すれば、顧客基盤や流通チャネルを即座に活用できるためです。

さらに、現地の法規制や商習慣に精通した人材やノウハウを獲得できるため、事業運営のリスクを低減し、スムーズな市場参入が期待できるでしょう。

 

市場シェアの拡大

クロスボーダーM&Aを通じて、対象企業の持つ市場シェアを即座に取り込むことが可能です。とりわけ、高成長市場への参入は大きな成長機会を提供するものです。

 

グローバルプレゼンスの向上

クロスボーダーM&Aは、国際的な企業イメージやブランド価値を向上させる効果があります。買収企業は当地での、競争力の強化を図ることが可能です。

 

新技術の獲得

クロスボーダーM&Aを通じて、日本にはない高度な技術やノウハウを持つ海外企業を取得することにより、新技術を獲得できます。新製品開発や技術革新をしやすくなるでしょう。

 

人材とネットワークの獲得

クロスボーダーM&Aにより、優秀な人材や既存の販売ネットワークなどの、貴重なリソースを取り込むことが可能です。現地市場での迅速な事業展開や、効率的な販売活動が期待できます。

クロスボーダーM&Aの流れ

クロスボーダーM&Aは、国内M&Aとは異なる複雑なプロセスを伴います。クロスボーダーM&Aの流れは次のとおりです。

1. M&A戦略の立案
2. マッチング及び企業概要書の提案
3. 現地視察・面談
4. 基本合意(MOU)または意向表明(LOI)調印
5. デューデリジェンス
6. 最終契約の交渉と締結
7. クロージング

 

M&A戦略の立案

自社の成長戦略と海外進出の目的を明確化し、ターゲットとする国・地域を選定。さらに買収対象となる業態の決定や予算の設定など、具体的なM&A戦略を立案します。

 

マッチング及び企業概要書の提案

M&Aアドバイザーと連携し、自社の戦略や条件に合致する海外企業の情報を収集・分析。選定した候補企業に対して、企業概要書(ティーザー)を作成・提示します。

 

現地視察・面談

候補企業との関係を深めるため、現地を訪問し、代表者や経営陣との直接の面談を実施。相手企業の文化や経営方針を直接確認し、信頼関係を築きます。

 

基本合意(MOU)または意向表明(LOI)調印

両者の合意をもとに、基本合意書(MOU)や意向表明書(LOI)、すなわち買収条件や手続きの大枠を双方で確認するための重要な文書が作成され、調印が行われます。

このフェーズで買い手企業は独占交渉権を獲得するのが一般的です。売り手企業は一定期間ほかの買い手と交渉することが制限されます。

 

デューデリジェンス

買収企業は、取り組んでいるM&Aが妥当かどうかを評価するために、デューデリジェンスを行います。対象企業の情報を収集・分析し、リスクや価値を評価するプロセスです。

特にクロスボーダーM&Aでは、各国の法規制や商習慣の違いを踏まえた慎重な調査が求められます。

 

最終契約の交渉と締結

最終契約の交渉では、デューデリジェンスで明らかになった情報をもとに、最終的な契約条件を詰めていきます。

締結に際しては、M&Aにおける買収条件や価格、経営権の移転方法など、取引の詳細について双方の合意が必要となります。これらの合意内容は最終契約書(Definitive Agreement)として文書化され、法的拘束力を持つことになります。

 

クロージング

クロージングは、最終契約書にもとづき、実際に株式や資産の譲渡、対価の支払いなどを完了させる手続きです。契約で定められた条件がすべて満たされていることを確認し、必要な法的手続きや許認可の取得を行います。

クロージングが完了すると正式に経営権が移転し、買収企業が対象企業の経営を開始することができます。

クロスボーダーM&Aの事例

日本企業によるクロスボーダーM&Aの事例として、以下の2つを見ていきましょう。

・コニカミノルタ株式会社
・スタンレー電気株式会社

 

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社は、米国子会社REALM IDx社を通じて、カリフォルニア州の遺伝子検査企業Ambry Genetics社の全株式を、イリノイ州のTempus AI社に譲渡する旨を決定し、株式譲渡契約を締結しました。

この譲渡は、プレシジョンメディシン事業の成長加速と財務状況を考慮した戦略的判断によるものです。譲渡価額は総額6億ドルで、そのうち3億7,500万ドルは現金、2億2,500万ドルはTempus社のA種普通株式で支払われます。

譲渡実行日は2025年3月期下期を予定しており、コニカミノルタはプレシジョンメディシン事業のポートフォリオを再編成し、さらなる成長を目指しています。

参照:M&Aマガジン『コニカミノルタ、遺伝子検査企業の米Ambry Geneticsを売却』

 

スタンレー電気株式会社

スタンレー電気株式会社は、ブラジルの二輪および商用車用ランプ製造・組立企業であるAngstrom ElectricLtda.の株式75%を取得し、子会社化する旨を決定しました。

この買収により、スタンレー電気は南米市場での事業基盤を強化し、特に北部マナウス地域に集積する二輪メーカーに対して競争力のある製品供給を目指しています。

さらに、AngstromElectricが保有するテックセンターを活用することで、南米市場をターゲットとした四輪・二輪車両の設計・開発から生産までを一貫して行える体制をブラジル国内で構築する計画です。

参照:M&Aマガジン『スタンレー電気、二輪用・商用車用ランプ製造組立のブラジルAngstrom Electricを子会社化』

まとめ

クロスボーダーM&Aは、国境を越えた企業買収・合併を指し、新市場への迅速な参入や技術・人材の獲得など多くのメリットがあります。クロスボーダーM&Aを成功させることで、国際競争力の強化が期待できるでしょう。

ただし、成功には適切な準備が必要であり、文化や法制度の違いによるリスクも伴うため、慎重な戦略立案と専門家のサポートが不可欠です。海外展開を検討中の中小企業責任者のかたは、ここでの情報を参考にクロスボーダーM&Aの第一歩を踏み出してください。

M&A・事業承継のご相談ならM&AHUB
M&A・事業承継のご相談ならBIG4出身のM&AアドバイザーのいるM&AHUBにご相談ください。
\ M&AHUBが全国で選ばれる。 /
3つの特徴をご紹介します
point 01
自社ネットワークで最適なパートナーが見つかる
point 02
BIG4出身のM&Aアドバイザーがサポート
point 03
着手金0+明瞭な価格体系+補助金でコスト削減