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事業継承税制とは何か?適用要件、適応までの流れをわかりやすく解説

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事業継承の際に発生する税負担を軽減する「事業継承税」。2018年の税制改正により、旧制度と比較して大幅に利用しやすくなりました。

この制度を利用することで、中小企業は後継者に事業を継承させる際に発生する贈与税や相続税を支払う必要がなくなります。

資金が限られている中小企業において、納税を遅らせることができるのは非常に大きなメリットとなりますね。

この記事では、事業継承税制についてなるべく簡潔にわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
(2020年7月時点の情報になります。税制の適用にあたっては、必ず最新の情報をご確認ください)

*贈与税=生前に株式などを渡した際にかかる税金。
*相続税=財産を持っている人の死亡したことによって、株式などを譲り受けたときに支払わなければいけない税金。

事業継承税制とは何か?

「事業継承税制」とは、先代経営者から後継者が株式を引き継いだ場合に、資産の贈与税や相続税の納税を猶予または免除する制度です。株式を売却したり、譲渡する場合には利用できません。

株式を継承してからすぐに税金が免除されるわけではなく、後継者が事業を継続させ、次の後継者に継承した時に免除となります。つまり、免除されるまではあくまで猶予されている状態です。

都道府県知事から認定されている「非上場企業」が対象となります。これは、大企業ではなく、中小企業の維持を目的とされているためです。

【例】

現経営者→→→株式→→→後継者・・・・・・・・→次期後継者
        ↓贈与税(相続税)が発生  ↓
   後継者が次期後継者に事業を継続させることで税金が免除になる!

*次期後継者は申し込み時に未定でも可。

事業継承税制の変更点を確認【2018年改正】

中小企業の経営者の高齢化が進行するの中で、世代交代を促すため2018年(平成30年度)に現行の事業継承税制に改正。

もともと平成21年度に作られた制度の内容と比較すると要件が緩和され、大幅に使い勝手がよくなりました。

改正前と後の内容の違いは以下の表にまとめています。

項目改正前の内容改正後の内容(特例)
対象株式発行済議決権株式の総数の2/3全ての株式
贈与・相続税の猶予(免除)割合80%100%
贈与・相続を行う対象先代経営者のみ複数の株主
後継者1人最大3人
相続時清算課税推定相続人のみ推定相続人以外も可能
雇用維持80%の維持5年平均で80%(実質撤廃)

平成30年の改正はあくまで特例です。この特例には2027年12月31日までに事業継承を行う必要があり、2023年3月31日までに計画書を提出しなければいけません。

事業継承税制の適応までの流れ

平成30年度の新しい事業継承税制が適応されるまでの、簡単な流れは以下のようになります。

①特例継承計画の作成
②特例継承計画の提出 (2023年3月31日期限)
③継承の実行
④認定申請
⑤申告期限後5年間の報告
⑥申告期限から6年目以降の報告 あるいは、
⑦次期後継者に事業を継承

④までの工程で事業継承税制の適応は完了となります。しかし、すでに説明しているように、申請から5年が経過し、次期後継者に事業が継承された時点で、贈与・相続税が免除されます。

事業継承税制の適応の条件

以下の条件を満たした上で、法人が所在する都道府県から認定をもらう必要があります。

①会社に関する条件
②先代経営者に関する条件
③後継者に関する条件
④継承後の事業継続の条件

それぞれの条件について解説していきます。

①会社に関する条件

事業継承税制を受けるためには、以下の会社に該当しないことが適応条件となります。

  • 上場会社
  • 中小企業に該当しない会社
  • 風俗営業会社
  • 資産管理会社

中小企業者に該当する業種分類

事業継承税制を利用できるのは「中小企業」です。それでは、中小企業の定義はどのようなものなのでしょうか?

業種分類資本金従業員数
製造業そのほか3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下

(出典:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html)

中小企業者の定義で、重要となるポイントは資本金と従業員数の2点です。この2点のいずれかを満たしていれば「中小企業」となります。

資本金額が上の表の要件に当てはまらない場合、資産を調整(減額)することで中小企業者に該当します。

資産管理会社に該当する企業者

不動産や株などの資産を管理する法人は「資産管理会社」に該当し、事業継承税制を利用することはできません。

資産管理会社は、「資産保有会社」と「資産運用会社」の大きく2つに分けられます。

資産管理会社に当てはまるかどうかは、特定資産の合計評価額や運用収入の合計によって判断することが可能です。

②先代経営者に関する条件

先代経営者に関する条件は、贈与する場合と相続する場合にもよって少し異なります。

贈与・相続のどちらにも共通して必要な条件を簡単にまとめると以下の3点です。

① 会社の代表取締役を経験していたこと
② 贈与または相続の直前に、その会社の筆頭株主であったこと
③ 贈与時に代表取締役ではないこと

先代経営者は、過去に代表取締役であった経験があれば、贈与直前に退任していても大丈夫です。

贈与の場合

以下の項目の全てを満たす必要があります。

・会社の代表権を有していたこと
・贈与の直前において、贈与者(先代経営者)および贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと
・贈与時において、会社の代表権を有していないこと

相続の場合

以下の項目の全てを満たす必要があります。

・会社の代表権を有していたこと
・相続開始の直前において、被相続人(先代経営者)および被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多くの議決権数を保有していたこと

*ただし、相続開始の直線において、すでに事業継承税制の適応を受けている場合はこの要件は不要。

③後継者に関する条件

後継者に関しても、先代経営者に関する条件と同様に、贈与と相続の場合によってことなります。

贈与・相続のどちらにも共通して必要な条件を簡単にまとめると以下の2点です。

① 贈与を受け取る際に代表取締役に就任していること
② 贈与または相続を受けることで、会社の筆頭株主になること

後継者に関しては、先代経営者と比較すると、贈与と相続で条件が多数異なりますので、以下の表で詳細を確認できます。

贈与と相続の点で大きく違うところは、 贈与の場合は、贈与前に3年間継続して会社の役員であることが必要です。しかし、相続で事業継承税制を受ける場合は、役員の期間は限定されず「役員であること」が条件となります。また、後継者は、相続発生から5ヶ月以内に代表取締役に就任しなければいけません。

贈与の場合

以下の項目を全て満たす必要があります。

・会社の代表権を有していること
・20歳以上であること
・役員の就任から3年以上経過していること
・後継者および後継者と後継者の親族など特別の関係がある者でそう決議数の50%超の議決権数を保有すること
・後継者が一人の場合、後継者と特別の関係がある者の中で、後継者が最も多くの議決権を保有すること
・後継者が一人ではない場合、総議決権の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者の中で、最も多くの議決権数を保有すること

相続の場合

以下の全ての項目を満たす必要があります。

・相続開始の日の翌日から5ヶ月を経過する日において会社の代表権を有していること
・相続開始の時において、後継者および後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有すること
・後継者が一人の場合、相続開始の時において、後継者と特別の関係がある者の中で、後継者が最も多くの議決権数を保有すること
・後継者が一人ではない場合、相続開始の時において、総議決権数の10%以上の議決権数を保有し、かつ、後継者と特別の関係がある者の中え、最も多くの議決権数を保有することになること
・相続開始の直前において、会社の役員であること。

*被相続人が60歳未満で死亡した場合を除く

④事業継続の条件

事業継承税制の目的は、中小企業を存続させ雇用を守ることです。そのため、この制度を利用する場合は、5年間の事業の継続が必要となります。

ただ事業を継続させるだけでなく、5年間の間は以下の3つのことを守り続けなければいけません。

① 後継者が代表取締役であり続けること
② 後継者が会社の株式を保有すること
③ 雇用の8割を維持すること(5年間の平均)

この3つのことを維持しなければ、猶予されていた税金を支払わなければいけません。しかし、平成30年には、「正当な理由(経営の悪化など)であれば、条件を満たすことができなくても問題はない」とされました。

そして5年間が経過した後に、次の後継者に事業を継承することで贈与・相続税が免除されることとなります。

もし後継者が、次期後継者に事業を引き継ぐ前に死亡した場合においても、納税は免除されます。

事業継承税制のポイント

事業継承税制は、贈与・相続税の支払いの猶予を受けられるのが最大のメリットです。

一方で、申請後すぐに納税が免除になるわけではなく、5年間の猶予期間があり、申請方法・申請後のルールが少々複雑なことがデメリットと言えます。

事業継承税制に関する疑問は、経験豊富な税理士や公認会計士に相談してみてはいかがでしょうか。