直接金融とは?資金調達の手法として活用するメリットや間接金融との違いについて解説

公開日 2025/06/25
更新日 2025/06/25
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企業が資金調達を行う際の主要な方法として、直接金融と間接金融があります。この記事では、直接金融の概要やそのメリット、間接金融との違いについて解説します。

また、具体的な資金調達手法についても見ていきましょう。自社にとっての、最適な資金調達方法を選択する際の参考としてください。

直接金融とは?

直接金融とは、企業や政府が株式や債券、コマーシャル・ペーパー(CP)などを発行し、金融市場を通じて投資家から直接資金を調達する仕組みです。

この方法では、金融機関を介さずに資金の供給者と需要者が直接結びつくため、資金調達の柔軟性や効率性が高まるとされています。

 

間接金融との違い

資金調達方法としての直接金融と間接金融には明確な違いがあります。

間接金融では、銀行などの金融機関が預金者から集めた資金を企業や個人に貸し出す仲介者として機能します。この場合、資金の供給者と需要者は直接的な関係を持たず、金融機関がリスクを負うことになります。

 

直接金融の拡大

近年、企業の資金調達手段が間接金融から直接金融へとシフトする動きが加速しています。

特に、株式発行を通じたエクイティ・ファイナンスの活用が注目されており、2023年6月には中小企業庁の「中小企業政策審議会」で、中小企業のエクイティ促進が議題となりました。

この背景には、金融ビッグバンや規制緩和の進展、低金利環境などが影響しています。

政府も「資産運用立国」の実現を目指し、2023年10月には資産運用業界改革に向けた有識者会議の初会合を開催するなど、直接金融の推進に積極的な姿勢を示しています。

参照:中小企業庁 中小企業とエクイティ・ファイナンス

直接金融で利用できる資金調達方法の例

直接金融による資金調達には、以下の4つの代表的な方法があります。

・エクイティファイナンス

・デッドファイナンス

・アセットファイナンス

・クラウドファンディング

 

エクイティファイナンス

エクイティファイナンスとは、企業が新たに株式を発行し、投資家から資金を調達する方法です。主な手法として、公募増資、株主割当増資、第三者割当増資などがあります。

公募増資は不特定多数の投資家を対象に、株主割当増資は既存の株主に対して、第三者割当増資は特定の第三者に対して新株を発行するものです。

また、新株予約権の発行もエクイティファイナンスの一種です。新株予約権とは、将来的に特定の価格で株式を購入できる権利を指します。企業は新株予約権を発行することで、即時の株式発行による株価への影響を抑えつつ、段階的な資金調達が可能となります。

 

デッドファイナンス

デッドファイナンスとは、企業が負債を通じて資金を調達する方法です。具体的には、社債の発行や金融機関からの借入などが含まれます。

社債には、短期の無担保約束手形であるコマーシャルペーパー(CP)、株式に転換可能な転換社債(CB)、特定の投資家を対象とした私募債など、多様な種類があります。

これらの手法の活用で必要な資金を迅速に調達できますが、デッドファイナンスには返済義務が伴い、利息の支払いも必要です。よって、資金繰りや財務状況への影響を十分に考慮する必要があります。

 

アセットファイナンス

アセットファイナンスとは、企業が保有する資産を活用して資金を調達する方法です。

具体的には、不動産や売掛債権、知的財産権などの有形・無形資産の売却や、これらの資産を裏付けとした証券化商品の発行により資金を確保します。

この手法のメリットは、企業の信用力に依存せず、保有資産の価値を基に資金調達が可能な点です。

ただし、資産を売却する場合に手数料が発生することや、売却可能な資産が限られている場合には調達額が制約されるなどのデメリットも存在します。

 

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネット上のプラットフォームを活用し、不特定多数の人々から少額ずつ資金を集める資金調達方法です。

この手法は、銀行融資などの従来の資金調達手段とは異なり、アイデアやプロジェクトに共感した個人から直接資金を獲得できます。

クラウドファンディングには、購入型、寄付型、金融型などの種類があり、プロジェクトの目的やリターンの内容によって使い分けられます。

特に、スタートアップ企業やNPO法人にとっては、資金調達だけでなく、プロジェクトの認知度向上や市場調査の手段としても有効です。

企業が直接金融で資金調達をするメリット

企業が直接金融で資金調達をする主なメリットは、以下の4つです。

・返済期限の縛りがない

・資金調達コストの削減

・財務体質の強化と信用力向上

・柔軟な資金調達方法

 

返済期限の縛りがない

直接金融による資金調達は、銀行融資とは異なり、明確な返済期限が設定されない場合が多いです。例えば、株式発行によるエクイティファイナンスでは、投資家からの出資を受ける形となり、元本の返済義務がありません。

そのため、企業は資金を長期的な視点で活用でき、返済に追われることなく事業展開が可能です。この特性は、新規事業や高リスクのプロジェクトにおいて特に有利に働きます。

ただし、出資を受けると株主への配当や経営権の希薄化といった側面があるのも否めません。

 

資金調達コストの削減

直接金融の活用で、企業は銀行などの仲介機関を介さずに資金を調達できるため、利息や手数料といった中間コストを削減できます。

また、寄付型クラウドファンディングなどの手法を用いれば、返済や金利負担のない資金調達も可能です。これにより、企業は資金調達に関わるコストを最適化しながら、必要な資金を確保できます。

 

財務体質の強化と信用力向上

株式発行による資金調達は、自己資本比率の向上につながり、企業の財務基盤を強化するものです。自己資本比率が高まると財務の安定性が増し、経営の健全性が評価されやすくなります。

さらに、自己資本の増加は企業の信用力向上にも寄与します。信用力が高まると金融機関からの追加融資が受けやすくなり、取引先との信頼関係も強化され、新たなビジネスチャンスの獲得につながるでしょう。

 

柔軟な資金調達方法

直接金融は、企業が投資家から直接資金を調達する方法であり、株式や社債など多様な手段が利用可能です。、自社の状況や資金調達の目的に応じて、最適な方法を柔軟に選択できます。

例えば、成長段階にある企業は株式発行によるエクイティファイナンスを選択し、負債を増やさずに資本を調達できます。

一方、安定したキャッシュフローを持つ企業は、社債発行によるデットファイナンスを活用し、金利負担を抑えつつ資金の調達が可能です。

このように、直接金融は企業の多様なニーズに対応できる柔軟性が大きなメリットとなります。

企業が直接金融で資金調達する際のリスク

企業が直接金融で資金調達する際の主なリスクとして、以下の3点が挙げられます。

・経営権の希薄化

・配当金や利息の負担

・市場リスクへの依存

 

経営権の希薄化

株式発行による資金調達は、企業にとって有効な手段ですが、新たな株主の参入により既存の経営権が希薄化するリスクがあります。

特に、大量の株式を発行した場合、持株比率が低下し、経営の意思決定に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、株式の分散は敵対的買収のリスクを高める要因ともなりえるでしょう。敵対的買収者が市場で株式を買い集め、経営権を掌握しようとするケースも報告されています。

また、株主数の増加に伴い、経営方針に対する異議申し立てや株主訴訟のリスクも増加するため、慎重な対応が求められます。

 

配当金や利息の負担

直接金融による資金調達では、調達方法に応じて異なる金銭的負担が発生します。株式発行の場合は配当金の支払いが必要となり、公募増資などで発行済株式数が増えると、配当金の総額も増加します。これは長期的に企業の財務状況に影響を及ぼす可能性があるでしょう。

一方、社債発行による資金調達では、定期的な利息支払いが必要です。

市場環境や企業の信用力によっては、これらの利息負担が銀行融資の利息以上となる場合もあり、企業にとって大きな負担となる場合があります。

 

市場リスクへの依存

直接金融による資金調達は、市場環境の影響を強く受けます。例えば、株式市場や債券市場が低迷している場合、企業が新たに株式や社債を発行しても、投資家から十分な資金を集められないリスクは否めません。また、不利な条件での発行を余儀なくされる可能性もあります。

さらに、金利の上昇局面では、社債の利回りが上昇し、企業の資金調達コストが増加する可能性があります。

このように、市場の状況に依存するため、直接金融を活用する際にはタイミングや市場動向を慎重に見極める必要があります。

まとめ

直接金融は、企業が金融機関を介さずに投資家から直接資金を調達する方法です。この手法は、返済期限の制約が少なく長期的な視点での資金活用が可能なこと、中間コストの削減による資金調達の最適化、自己資本比率の向上による財務体質の強化、そして多様な調達手法から選択できる柔軟性といったメリットが期待できます。

一方で、株式発行による経営権の希薄化、配当金や利息の支払い負担、市場環境に左右される調達の不確実性といったリスクも存在します。

企業はこれらのメリットとリスクを十分に理解したうえで、自社の状況や目的に適した資金調達方法を選択することが重要です。

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