協調融資とは? メリット・デメリット・融資を受けるためのポイント解説

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企業が大規模な資金調達を検討する際、複数の金融機関による「協調融資」は有力な選択肢となります。

この記事では、これから資金調達を考えている企業に向けて協調融資とは何か、そのメリットやデメリット、融資を受けるためのポイントなどを解説します。

協調融資とは?

協調融資とは、単独の金融機関からでは調達が難しい大口の資金を、複数の金融機関から同時に借り入れる手法です。金融機関にとってはリスクが分散され、借り手は必要な規模の資金を効率的に調達することが可能となります。

この協調融資は、主に大規模なプロジェクトや新規事業の立ち上げなど、企業が多額の資金を必要とする場面で活用される手法です。

金融機関同士が連絡を取り合い、融資条件の統一を図るので、企業にとっては契約手続や管理業務の負担が軽減されるメリットがあります。  

協調融資のパターン

複数の金融機関によって共同で行われる協調融資には、主に3つのパターンが存在します。それぞれの特徴を理解して、自社の資金調達戦略に役立てましょう。 

  • ・日本政策金融公庫と民間の金融機関(保証協会付き融資)による協調融資
  • ・民間の金融機関の保証協会付き融資とプロパー融資の組み合わせ
  • ・メインバンクとサブバンクによるプロパー融資
  • 日本政策金融公庫と民間の金融機関(保証協会付き融資)による協調融資

    主に創業支援や事業再生支援、中小企業支援のほか、農林水産業などの分野において多く実施されています。

    一般的に創業時や中小企業は貸倒リスクが高いとされますが、この協調融資の形態では、民間金融機関がリスクを分散できる一方で、企業側は必要な資金を確保しやすくなります。そのため、こうしたリスクの高い案件でも融資実行の可能性が高まります。

     

    民間の金融機関の保証協会付き融資とプロパー融資の組み合わせ

    メインバンクから信用保証協会の保証付き融資と直接融資(プロパー融資)を同時に受けることができます。

  • 特に中小企業や創業間もない企業にとって活用しやすく、必要な資金を柔軟に調達できる手段です。また、金融機関にとってもリスク分散になるため、融資しやすくなるメリットがあります。

  • メインバンクとサブバンクによるプロパー融資

    主要取引銀行と補助的な取引銀行から直接融資を受けることができます。日本政策金融公庫や信用保証協会などの公的機関を介さず、民間金融機関から直接資金調達ができる点が特徴です。

    ただし、この融資を受けるためには、企業の信用力や事業計画の質が重視されます。また、金融機関同士の信頼関係も重要な要素となります。

    複数の金融機関から融資を受けられることから、より柔軟かつ大規模な資金調達が可能となります。

    協調融資のメリット

    複数の金融機関による協調融資の主なメリットとして、次の3項目が挙げられます。

    1. 大規模な融資提供を期待できる
    2.
    事務手続の負担軽減
    3. 将来の資金調達の幅拡大

    1. 大規模な融資提供を期待できる

      協調融資では、複数の金融機関が共同で資金を提供するため、企業は単独の金融機関からの借入れでは難しい大規模な資金調達が可能になります。

      その結果、企業は大規模なプロジェクトや設備投資など、通常の融資枠を超える事業にもチャレンジできるようになります。 

    2. 事務手続の負担軽減

      協調融資では融資の主幹事となる金融機関が他の参加金融機関との調整や手続を一括して行うため、複数の金融機関に個別の融資を受けることに比べて、事務手続の負担が大幅に軽減されます。 

      また、、融資実行までのプロセスが効率化されることで資金調達にかかる時間も短縮され、迅速な資金調達が可能となるでしょう。 

    3. 将来の資金調達の幅拡大

      協調融資を通じて複数の金融機関と取引実績を築くことで、各金融機関からの信頼性が向上し、将来的な資金調達の選択肢が広がる可能性があります。これにより、企業は多様な資金調達手段を活用できるようになります。 

      さらに、複数の金融機関との関係構築は、経営状況や事業計画に応じた柔軟な資金調達を可能にし、企業の成長戦略を支える重要な要素となります。  

      協調融資のデメリット

      一方、協調融資には、次のようなデメリットも存在します。

      • 1. 審査の長期化
      • 2. 全金融機関の承認が必要

      審査の長期化

      協調融資では、複数の金融機関が関与するため、通常の単独融資よりも審査期間が長引く場合があります。

      一般的に、単独の融資審査が1か月前後で完了するのに対し、協調融資では2か月から3か月程度を要するケースも少なくありません。 

      資金調達の「額」よりも「迅速さ」が求められる場合には、他の方法が適している場合もあります。資金調達のスケジュールを考慮し、利用する方法を検討しましょう。  

    4. 全金融機関の承認が必要

      複数の金融機関が共同で融資を行う協調融資では、各金融機関の審査と承認が必要となります。参加するいずれかの金融機関が融資を否認した場合、全体の融資計画が成立しない可能性があります。 

      協調融資を利用する際には、関係するすべての金融機関との信頼関係の構築が重要です。また、各金融機関の審査基準やリスク評価が異なることを考慮し、事前に十分な準備を行う必要があります。  

      協調融資を受けるためのポイント

      協調融資を受けるための主なポイントとして、次に挙げる3項目を見ていきましょう。

      1. 金融機関と良好な関係を築く
      2. 詳細な事業計画書・返済計画書を作成する
      3. 日本政策金融公庫との連携を検討する
      1. 金融機関と良好な関係を築く

        金融機関との良好な関係を築くためには、日常的なコミュニケーションが重要です。定期的に担当者と連絡を取り、会社の現状や計画を共有する努力により信頼関係を深められます。 

        また、担当者が変更になった際には、新たな担当者に自社の情報を正確に伝える努力が必要です。金融機関内での理解が進み、スムーズな取引が期待できます。  

        詳細な事業計画書・返済計画書を作成する

        協調融資の成功には、現実的で根拠のある事業計画書と返済計画書の作成が不可欠です。

        これらの計画書には市場調査、競合分析、ターゲット層の調査、収支計画など、詳細な情報を盛り込む必要があります。

        特に、収支計画は将来の利益確保の道筋を示し、それを基に返済が可能である旨を金融機関に示す重要な資料といえるでしょう。 

        日本政策金融公庫との連携を検討する

        日本政策金融公庫は、民間金融機関が積極的に支援しにくい創業フェーズのベンチャーやスタートアップ、NPOなどのソーシャルセクターに対して、政策的に積極的な支援を行っています。

        特に中小企業や創業者は民間金融機関との協調融資にも積極的に取り組んでいる同公庫との連携で、高額融資の実現可能性を高められるでしょう。

        まとめ

        協調融資は、複数の金融機関が連携してひとつの企業に資金を提供する仕組みであり、高額な資金調達やリスク分散の面で大きなメリットがあります。ただし、審査期間の長期化といったデメリットも否めません。

      2. 円滑に融資を受けるためには、金融機関との良好な関係構築や、詳細で現実的な事業計画書・返済計画書の作成が不可欠です。特に中小企業や創業者は日本政策金融公庫との連携で、高額融資の可能性を高められます。

      3. まずは取引のある金融機関に相談し、協調融資の可能性について検討してみましょう。

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