設備投資の資金調達方法とは?補助金と融資どちらを使うべきか

公開日 2025/12/28
更新日 2025/12/28
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設備投資を通じて、企業は次の成長ステージを目指せます。しかし、多額の資金を要するために「どの資金調達を選ぶか」が重要な判断となります。

特に「返済不要」の補助金・助成金か、「返済義務あり」の融資かという選択肢は、キャッシュフローやリスクに大きく影響します。この記事では、設備投資における補助金・助成金と融資のメリット・デメリットを整理し、最適な選び方を解説します。

事業成長を加速させる設備投資と資金調達の重要性

設備投資は、企業が未来に向けて成長を実現するための基盤を築く手段です。その基盤を整えるために、適切な資金調達方法を選ぶことは、成長速度や経営の健全性に直結します。

 

設備投資が経営にもたらすインパクトとは?

 

設備投資によって、生産性の向上が期待できます。また、最新設備の導入や自動化により、競争力を確保できるようになります。既存設備の老朽化対策や故障リスク低減にもつながり、経営の安定性が高まるでしょう。

さらに、新たな技術や設備を導入することで、事業拡大や新市場参入のチャンスも生まれます。

 

なぜ資金調達方法の選択が重要なのか?キャッシュフローへの影響

 

資金調達の手段によって、返済義務の有無や金利・手数料などのコストが異なります。例えば融資を選べば、返済負担や利息支払いが発生し、その分キャッシュフローが圧迫される可能性があります。

一方、補助金・助成金を活用すれば返済不要のものもありますが、申請や交付まで時間がかかることもあります。そのため、資金調達方法を誤ると、短期的な現金の流れが窮迫し、将来の設備投資や運営に影響を及ぼすことになります。

 

理解すべき「設備資金」と「運転資金」の基本的な違い

 

「設備資金」とは、機械設備や施設、新システム導入など長期的に使用される資産の取得・改良に関わる資金を指します。一方、「運転資金」とは、日常の事業活動、例えば仕入れや人件費、短期債務の支払いなどに必要な資金です。

金融機関がこれらを厳格に区別する理由としては、返済期間・資金回収期間・リスクの性質が異なるためです。例えば、設備資金には長期返済が許されやすく、運転資金は回転が速いため短期での返済が前提となるケースが多いです。

補助金・助成金と融資のメリット・デメリット

補助金・助成金と融資、それぞれに長所短所があるため、どちらを使うべきかを理解することが重要です。

 

返済不要が最大の魅力「補助金・助成金」

 

補助金・助成金の最大のメリットは、返済不要である点です。しかしながら、申請書類や審査手続きが煩雑であるというデメリットがあります。

さらに、採択に至らないリスクがあり、確実性が融資より低い場合があります。また支給が後払いとなるケースも多く、先行して資金を準備しておく必要がある点も注意が必要です。

 

高額・長期の投資に対応できる「融資」

 

融資を選べば、まとまった資金を短期間で確実に調達できる可能性があります。ただし返済義務が生じ、利息や手数料の支払いが発生します。

また、審査のために事業計画や財務資料、見積書等の書類準備が必要となり、手続きが比較的重めです。さらに、返済が始まるとキャッシュフローに影響を及ぼすため、返済スケジュールを慎重に検討する必要があります。

 

どちらを優先すべきかの判断基準

 

補助金・助成金と融資のどちらにするかは、企業の状況(例えば投資の「緊急性」、今後のキャッシュフローの状況、設備投資が政府の政策目的に合致しているかなど)に応じて選択すべきでしょう。

例えば、政策目的(省エネ、デジタル化、自動化など)に合致している設備投資であれば、補助金・助成金の優先検討が適します。

一方で、急ぎで大量の投資を行う必要がある場合や、補助金採択の見込みが低い場合には、融資を検討するのが賢明です。また、補助金・助成金と融資を併用する戦略も有効で、補助金で一定部分をカバーし、残りを融資で賄うことでリスクを分散できます。

設備投資に活用できる資金調達方法

設備投資を実現するための具体的な資金調達手段を、代表的なものから紹介します。

 

金融機関からの融資

 

代表的な借入先として、例えば日本政策金融公庫(国の公的金融機関)、銀行、信用金庫、各自治体の制度融資などがあります。

日本政策金融公庫では、設備資金貸付利率特例制度として、「設備資金で生産性向上等を図る設備を導入」する場合、利率が通常より低く設定される場合があるので注意が必要です。

返済期間や担保・保証人の有無により条件が異なります。例えば、一般貸付では設備資金の返済期間が10年以内などの設定があります。

 

国や自治体の補助金・助成金

 

返済不要の資金源として、国や自治体が設備投資を(要件を満たす場合に)支援する補助金・助成金制度があります。

例えば、中小企業省力化投資補助事業や成長加速化補助金などがあり、設備投資や生産性向上を目的とした支援を行っています。これらは、特定の政策目的(IT導入、省エネ、自動化など)に合致していることが条件となる場合が多いです。

自社の設備投資計画がどの制度に該当するかを効率的に調べるには、当サイト運営会社Staywayが提供する補助金クラウドの活用もご検討ください。

 

初期費用を抑えるリース契約

 

設備を「購入」ではなく「リース」という契約形態で導入することで、初期の設備投資負担を抑えることができます。この方法のメリットは、初期キャッシュアウトを抑えられる点にあります。

ただし、総支払額は購入時より高くなる可能性があります。また、リース終了時の設備所有権や返却義務など契約内容に制約があることもあります。契約期間や設備の使用頻度を慎重に検討することが重要です。

 

自社の資産を現金化するアセットファイナンス

 

売掛債権を売却する「ファクタリング」や、不動産を売却して賃貸で使い続ける「リースバック」など、自社保有の資産を活用して現金化する手法があります。この方法のメリットは、既存の資産を活用して追加借入なしにキャッシュを生み出せる点です。

一方で、売却した資産を長期にわたって使い続ける場合、賃貸料や契約条件によりコストが発生する可能性があります。また、資産の売却・リースバックにより資産構成や賃借契約の制約が生じるため、経営上の影響を事前に検討すべきです。

設備投資の資金調達における審査を通過するための3つのポイント

設備投資を伴う資金調達(特に融資)において、審査通過は重要なハードルです。事前に準備を整えることで通過率を高めましょう。

 

説得力のある事業計画と見積書の準備

 

設備投資の必要性や、その投資により見込まれる効果(収益増・コスト削減)を客観的に示す事業計画書が重要です。さらに、機械設備やシステム導入における価格の妥当性を示す見積書(相見積もりを含む)を準備することで、金融機関の信頼を得やすくなります。

特に設備代金の根拠や導入後の使途・稼働計画を明示しておくことが審査上のポイントです。このような書類を整えておくことで、融資審査の円滑化が期待されます。

 

「返済源」を明確に示す資金繰り計画

 

金融機関が最も重視するのは、返済能力すなわち「返済源」です。設備投資によって生まれる追加収益やコスト削減を利益(営業利益)に反映させ、減価償却費を加味したキャッシュフロー計算を行います。

例えば「設備導入により年間〇〇万円のコスト削減が見込まれ、それを基に年間返済額を設定する」といった説明が有効です。こうした資金繰り計画を示すことで、返済原資の裏付けが明確になり、審査通過の可能性が高まります。

 

設備の耐用年数内に収める返済期間の設定

 

融資の返済期間は、導入設備の法定耐用年数を目安に、原則その範囲内で設定されることが一般的です。設備が長期間稼働できると見込める場合でも、耐用年数を超えた返済期間を設定すると、金融機関からの評価が下がる可能性があります。

逆に返済期間が短すぎると、毎月の返済負担が重くなりキャッシュフローを圧迫するリスクもあります。そのため、設備の種類・稼働予想・収益モデルを踏まえ、返済期間を適切に設定することが審査を通過するための鍵となります。

状況別・目的別に見る最適な資金調達方法の選び方

企業の状況や設備導入目的によって、最適な資金調達手段は異なります。状況別に推奨される方法を見ていきましょう。

 

ケース1:すぐにでも最新設備を導入したい

 

緊急性が高い場合は、審査が比較的迅速なビジネスローンやファクタリングなどを検討するのが一案です。例えば、受注拡大を受けて即座に設備を導入しなければ機会を逃すというケースでは、補助金の申請待ちでは間に合わない可能性があります。

ただし、こうした手段は金利や手数料が高めになる傾向があるため、長期的なコストを把握しておく必要があります。また、返済開始時期・キャッシュフローへの影響をシミュレーションした上で活用することが望ましいです。

 

ケース2:自己資金が少なく、初期投資を極力抑えたい

 

手元資金を温存したい・リスクを抑えて設備投資を行いたい場合には、リース契約や補助金・助成金の活用が有効です。リースで初期負担を抑えつつ、補助金を併用することで資金調達コストを低減する戦略が取れます。

ただし補助金申請には時間と手間がかかるため、早期に申請準備を進める必要があります。また、リース契約の総支払額や契約期間・所有権の扱いをしっかり確認しておくことが欠かせません。

 

ケース3:創業期・赤字決算で銀行融資が難しい

 

創業して間もない、または直近決算が赤字という状況では、通常の銀行融資が難しい場合があります。このような場合には、国が設けた制度融資(例えば日本政策金融公庫の創業支援融資)や自治体の制度融資、不動産担保ローンなどを検討できます。

加えて、補助金・助成金を活用して初期投資を抑えたうえで、将来的に通常融資へ移行する戦略も考えられます。この段階では、審査通過に向けた事業計画の精緻化・信用力向上が鍵となります。

 

ケース4:社会貢献やSDGsに関連する設備投資を行いたい

 

省エネ設備導入や脱炭素化に関連する設備投資を行いたい場合には、補助金・助成金の中で「社会貢献性・SDGs対応」を条件とする制度が有効です。

また、こうした設備投資では、環境対応・省エネ・自動化といったキーワードが審査時にプラス評価となることがあります。さらに、金融機関の環境対応ローンやグリーンローン(環境適合型融資)も選択肢となり得るでしょう。

設備導入後の効果(CO₂削減量・省エネ率向上など)も事前に整理しておくことで、資金調達時の説得力が高まります。

まとめ

設備投資は、企業の成長と競争力強化にとって非常に重要です。資金調達方法として、返済不要の補助金・助成金と返済義務のある融資、それぞれにメリット・デメリットがあります。

適切な選択には、企業の状況・設備導入の目的・キャッシュフローの見通しを踏まえることが欠かせません。また、複数の手段を組み合わせて活用することで、リスクを分散しながら効率的に設備投資を進めていけるでしょう。

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