銀行融資を受けるために必要な書類と準備ポイント

公開日 2025/12/28
更新日 2025/12/28
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銀行から融資を受ける際、書類の準備が整っているかどうかは成否を大きく左右します。事業を拡大したい、設備投資を行いたい、運転資金を確保したいなどの目的があれば、早めに「何を」「どのように」整えるかを知っておくことが重要です。

適切な書類を揃えることで、審査の流れもスムーズに進み、安心して資金を確保できます。この記事では、銀行融資を受けるために必要な書類と準備すべきポイントを整理します。

銀行融資でまず押さえるべき「審査の視点」とは?

銀行融資の審査では、提出書類そのものよりも「何を見て、どう判断するか」がポイントになります。

 

銀行は「返済能力」と「事業の信頼性」を見ている

 

銀行が貸し出しを行う際、第一に重視するのは「貸したお金が返ってくるか=返済能力」です。加えて、書類が期日通り揃っているか、説明がきちんとできるかといったプロセスの整備状況から、「経営者としての信頼性」も見られています。

つまり、良い数字だけでなく、それを取り巻く背景や経営者の説明姿勢・態度も重要です。
赤字期があっても、なぜそうなったか合理的に説明できるかどうかがポイントになります。銀行との初対面の段階から、書類の抜けや説明の曖昧さが「不安材料」として働くことを忘れてはいけません。

 

書類準備は、自社の経営状況を見直す絶好の機会

 

書類を用意するという行為は単なる「申請のための作業」ではなく、自社の強み・弱みや資金の流れを再確認する良い機会でもあります。例えば、事業計画書や資金繰り表を作る過程で、自社の収益構造・支出構造を俯瞰でき、改善余地が見えてくることがあります。

また、融資のために数値を整理することで、経営者自身が「今後どう動くか」を明確に言語化できるようになります。こうした準備を怠ると、銀行の説明を受けた際や面談の際に「回答できない」「曖昧なまま」という事態に陥りかねません。

銀行が見る「5大書類」の準備ポイント

銀行融資を検討する際には、提出を求められる主要な書類があります。これらをただ揃えるだけでなく、ポイントを押さえて準備することが審査通過の可能性を高めます。

 

①決算書・確定申告書

 

これは、会社の「過去」の経営成績を示す最も重要な書類です。特に、貸借対照表および損益計算書を通じて、銀行は「返済能力」を判断します。

もし赤字経営や売上減少の期がある場合には、その理由(例えば先行投資・一時的な外部要因など)を説明できる準備が重要です。
また、過去数期にわたるデータを求められるケースも多いため、直近のみならず2〜3期分まとめて準備しておくと安心です。

 

②試算表

 

決算書(1期以上前)とは異なり、「直近」の業績を示す資料が試算表です。決算報告から時間が空いている場合には、銀行から直近試算表の提出を求められることがあります。

また、売上や利益・経費の変化があるなら、その数字の動きを説明できるようにしておく必要があります。たとえば「売上増加」「経費削減」「外注変更」などがあれば、その背景を整理しておくと好印象です。

 

③事業計画書

 

これは、会社の「未来」の計画を示す書類です。なぜ融資が必要か(資金使途)、融資を受けた後にどう利益を出し、どのように返済していくか(返済見込み)を、具体的な数値を用いて示すことがポイントです。

単に「拡大したい」「設備を導入したい」というだけでは不十分で、「設備導入で月〇〇件、売上〇%増、コスト〇%削減」というように根拠となるデータがあると安心です。

 

④資金繰り表

 

お金の流れ(キャッシュフロー)を示す書類です。特に、「資金繰り予定表」を用いて「なぜ今、いくら資金が不足(または余裕)するのか」を示す目的があります。

銀行は決算書だけでは将来の返済可否を判断しづらいため、月次・将来数か月の資金流出入を可視化しているかを重視します。資金繰り表を用いて、「支払タイミング・回収タイミング・借入返済のタイミング」が整っているかどうかを整理しておきましょう。

 

⑤納税証明書

 

これは、「社会的信頼」の証ともいえます。銀行は、税金の未納や滞納がないかを重要視します。税金を適切に納めているかどうかは、経営者・法人としての信用に直結します。未納がある場合、審査通過は難しくなる可能性があります。

銀行融資の審査通過率を引き上げるポイント

書類を揃えるだけでなく、その準備・説明・対応を通じて「審査通過率」を高める工夫があります。次に、押さえておくべきポイントを整理します。

 

明確な「資金使途」と「金額の根拠」を説明できるか

 

融資申込時には、「何に、いくら必要か」を具体的に説明できることが重要です。例えば設備資金であれば見積書・契約書、運転資金であれば資金繰り表を用いて「この金額を借りて、こういう資金流で回し、返済に充てます」という根拠を整えておきましょう。

金額の裏付けが曖昧だと、銀行側は「本当に必要か」「返済できるか」を疑います。

 

十分な「自己資金」を提示できるか

 

自己資金があることは、経営者の「本気度」と「計画性」の証ともなります。預金残高だけでなく、退職金・資産売却益等、出所が明確な資金も認められます。銀行は「自社でも一定の負担をしていますね」と見ると評価が上がります。

ただし、自己資金比率が低すぎると融資額そのものが抑えられたり、条件が厳しくなる可能性があります。

 

代表者の「信用情報」はクリーンか

 

法人の融資でも、代表者個人の信用情報は当然チェックされます。例えば、税金の滞納、消費者金融等の個人借入の多さ、返済遅延の履歴などは「信用リスクが高い」と銀行に判断される要因です。事前に代表者個人の信用情報に問題がないか確認しておきましょう。

 

「面談」への万全な準備

 

銀行との面談は、提出書類の内容が本物か、経営者自身が自社の状況・計画を自分の言葉で語れるかを見極める場です。

想定される質問(例えば「先期赤字の理由」「今回の借入で利益がどう変わるか」など)に答えられるよう、経営者自身が説明できるようにしておくことが望まれます。加えて、清潔な印象・誠実な態度・数字の説明に強い準備が「信頼感」を醸成します。

 

銀行取引一覧表は「正直」に。他行の借入を隠さない

 

融資申込時には、他行からの借入状況も銀行側は把握しています。他行の借入を隠してしまうと信用を落としかねず、審査で不利になります。例え借入が多くとも、状況を整理し、返済計画を説明できる方が銀行にとって安心材料となります。

銀行融資の申し込みから実行までの6ステップ

銀行融資を実際に進める場合、以下のような段階があります。準備やスケジュールを把握しておきましょう。

 

ステップ1:相談・事前審査

 

まずは銀行窓口や融資担当者に、資金ニーズ・事業概要を相談するのが一般的です。この段階で「どういう目的で資金が必要か」「返済はどう考えているか」といった方向性を整理します。

また、事前審査として銀行が簡易的に返済能力・信用力を確認するケースもあります。
経営者が書類や説明の体制を整えてから相談することで、スムーズな流れになりやすいです。

 

ステップ2:必要書類の準備と提出

 

銀行から指示された書類(前述の5大書類+その他)がこのステップで準備・提出されます。提出時にはコピーだけでなく、原本の提示や確認を求められることもあります。

提出後、銀行の審査部門にて書類内容の確認が始まります。書類に抜けや説明不足がないよう、事前チェックをしておきましょう。

 

ステップ3:面談

 

提出書類に基づき、銀行の融資担当者と面談を行います。

事業計画や資金使途の詳細についてヒアリングされることが一般的です.面談にて、経営者が自社の現状や計画を自分の言葉で語れないと、書類と実態にギャップがあると判断される可能性があります。面談前に想定問答を整理しておくことが望ましいです。

 

ステップ4:本審査

 

面談と書類をもとに、銀行(加えて場合により信用保証協会など)が正式に融資の可否・条件を審査するステップです。この段階で、担保・保証・返済期間・金利・借入額などの条件が提示され、銀行内部で与信判断が下されます。

結果として「承認」「条件付き承認」「不承認」が出ます。条件付きの場合は追加資料の提出や条件修正が必要になることもあります。

 

ステップ5:契約

 

審査が承認された後、銀行から提示された融資条件で「金銭消費貸借契約」などの契約手続きが行われるケースが多いです。契約内容には、借入額・返済期間・金利・担保・保証・返済方法などが記載されます。

経営者・法人代表者が契約書に署名・押印することで正式に決定します。契約書の内容を十分に確認し、不明点は契約前に必ず明らかにしておきましょう。

 

ステップ6:融資実行

 

契約が完了すると、指定した口座に融資額が振り込まれるのが最終ステップです。融資実行後も、返済のための資金使途が適切か、返済が期日通りに行われているか、銀行はフォローすることがあります。

実行後は、資金使途通りに活用し、返済の遅延等がないように管理することが、今後の銀行との信頼関係構築につながります。

まとめ

銀行融資を受けるには「返済能力」「事業の信頼性」がまず問われます。書類準備を通じて自社の経営状況を見直すことが、むしろ強みになるでしょう。

決算書・試算表・事業計画書・資金繰り表・納税証明書の5大書類を、ただ揃えるだけでなく、説明可能な形で準備することが重要です。資金使途の明確化、自己資金の確保、代表者の信用維持、面談対策、他行借入の開示といったポイントに気を配ることで、審査通過の可能性を引き上げることができます。

また、資金調達の手段として融資と合わせて検討したいのが、返済不要な「補助金」の活用です。融資のために作成した事業計画書は補助金申請にも応用できるケースが多いため、まずは自社が使える制度がないかチェックしてみることをおすすめします。

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