クラウドファンディングでの資金調達は中小企業に有効か?仕組みと事例を解説

公開日 2025/12/28
更新日 2025/12/28
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クラウドファンディングという言葉を耳にすることが増えています。しかし、その仕組みや中小企業が活用すべきポイントは、まだ十分に理解されていないケースも多いようです。

資金調達手段として従来の銀行融資や株式発行とは異なる特長を持つため、中小企業には新たな可能性を開きます。この記事では、その仕組みと実際の事例を通じて、「中小企業にとってクラウドファンディングは有効か」を解説します。

クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングとはインターネットを介し、不特定多数の人から少額ずつ資金を調達する仕組みであると定義できます。

この方式では、企業や個人が「こんなことをやります」「こんな価値を提供します」と発信し、それに賛同した人々から資金を集めることが可能です。

 

銀行融資や出資との違い

 

銀行融資の場合、借りた資金は返済義務があり、さらに担保や保証人を求められることがあります。株式発行(出資型資金調達)では、企業が経営権を一部手放す可能性があり、株主との関係構築や議決権の管理が生じるものです。

クラウドファンディングのうち、購入型・寄付型は返済義務や担保が不要である一方、融資型や株式投資型は金融商品としての義務やリスクが発生します。そのため、従来の資金調達とは違うリスク・リターン構造で資金を集められる点が大きな違いです。

ただし、形式によりリターンや義務の有無が異なるため、手法の違いを理解しておくことが重要です。

中小企業が知るべきクラウドファンディング4つの種類

クラウドファンディングには、目的・リターン・支援者との関係性などに応じて複数の形式があります。中小企業が活用を検討する際には、種類ごとの特徴を把握しておくことが重要です。

 

購入型

 

支援者が商品やサービスを「購入する」形で支援する形式で、国内では最も一般的とされています。例えば、試作段階の新商品を「この価格で先行予約します」という形式で出すことで、資金を集めながら市場の反応を得ることが可能です。

そのため、新製品のアイデア段階や市場投入前のプロトタイプ段階での活用に適しています。返済義務がなく、支援者には商品の提供やサービスの先行提供というリターンがあるため、支援者と企業の関係を構築する入口としても機能するでしょう。

 

寄付型

 

支援者はリターンを求めず、社会貢献や慈善活動、災害支援などのプロジェクトに「寄付」する形式です。企業が地域貢献活動や社会的な目標を掲げてプロジェクトを立ち上げる際、支援者が共感して寄付を行うケースが該当します。

この形式では商品・サービスの提供が義務付けられていないため、純粋に支援の意思による資金が集まる傾向が明らかです。ただし、支援者との関係性づくりや信頼性の確保が重要で、返礼品やリターンを設けない分、プロジェクトの意義・透明性が問われます。

 

融資型

 

支援者(投資家)が企業に資金を「貸し付け」、期間後に元本と利息という金銭的リターンを受け取る形式(ソーシャルレンディング)です。この形式では、従来の銀行融資に近い性格を持ちますが、支援者が少額を多数集めて貸し付けるという点がポイントとなります。

企業側は返済義務を負いますが、従来の融資に比べて審査・担保の要件が緩和されている場合もあるでしょう。ただし、利息支払い・返済リスク・運用リスクが伴うため、利用前には契約内容や想定キャッシュフローの確認が必要です。

 

株式投資型

 

企業が自社の「非公開株」を提供し、支援者(投資家)から出資を募る形式です。投資家は企業の株式を取得し、株主としての権利を持つ場合があります。企業側には資本金の増加というメリットがあります。

一方、出資を受けた企業は経営の透明性を高めたり、株主対応を行ったりする必要が出てくるため、経営体制の整備が重要です。この形式を利用する企業は、成長性・将来性を訴求できることが前提になるため、ビジネスモデルや収益計画の説明がしっかりしていることが求められます。

中小企業がクラウドファンディングを活用するメリット

クラウドファンディングを活用することで、中小企業が得られるメリットも複数あります。
以下に代表的なものを整理しましょう。

 

【低リスク】原則、返済・担保が不要

 

購入型や寄付型の場合、銀行融資のような返済義務は生じません。そのため、融資のように毎月返済金が発生して経営を圧迫するリスクを低くできます。

また、担保を差し入れる必要がないプラットフォームも多く、資金調達のハードルが下がる場合があるでしょう。このため、挑戦的な新規事業やプロトタイプ開発といった段階で、「まず試してみる」ための資金調達手段として有効です。

ただし、担保・返済不要といってもプロジェクト実行・リターン提供などの責任は生じるため、準備を怠ってはいけません。

 

【テストマーケティング】市場の反応を事前に確認できる

 

クラウドファンディングにおいて、支援者からの「購入」「支援」「出資」によって、商品やサービスに対する市場の反応をリアルに確認できます。たとえば、新製品を出す前に「購入型」で先行販売を行い、支援数・コメント・フィードバックを通じて本格投入前の調整を行うという活用が可能です。

この点は、従来の大量生産・販売前の見切り発車と比べて、リスクを抑えて市場投入できるという意味で大きなメリットといえるでしょう。また、テスト販売した支援者がその後の顧客になったり、口コミをしてくれたりする可能性もあります。

 

【PR効果】プロジェクトの話題化による認知度向上

 

クラウドファンディングのプラットフォーム掲載や、SNS拡散、メディア露出などによって「プロジェクトをやっている」こと自体で話題になりがちです。このため、自社の取り組みや製品をより多くの人、潜在顧客、協力パートナーに知ってもらえる機会が生まれます。

特に、新規事業や技術・商品で「変化」を訴えたい中小企業にとって、資金調達以外の効果(ブランド構築・関係構築)は無視できません。その意味で、クラウドファンディングを「資金調達+マーケティング+ブランディング」の一環として位置付けることも有効といえるでしょう。

 

【コミュニティ形成】共感した支援者が「ファン」になる

 

クラウドファンディングでは、支援者が「この企業・商品・ミッションを応援したい」という形で参加します。そのため、支援者は単なる購入者ではなく「共感者/応援者」となりうるため、支援後のフォローアップを通じて将来的な顧客・ファンとして育成できる可能性があるでしょう。

このように、支援者と企業との「つながり」が生まれることは、中小企業にとって顧客基盤の強化・口コミ拡散・リピート購入のきっかけになることがあります。その意味で、クラウドファンディングは単なる一次資金調達手段ではなく、長期的なブランド育成の一部として捉えることが可能です。

 

【経営権の維持】株式発行と異なり経営権が分散しにくい

 

株式投資型を除く多くのクラウドファンディング形式では、支援者が株主にならないため、経営権の分散リスクが低く、創業者あるいは中小企業経営者が経営の自由度を保ちやすいというメリットがあります。

このため、経営方針を明確に保ちつつ資金を集めたい中小企業にとって、魅力的な選択肢となりえるでしょう。ただし、株式型の場合には出資者との関係構築・情報開示義務などが発生するため、その点は検討が必要です。

クラウドファンディングの実行前に知るべきデメリットとリスク

クラウドファンディングを活用する際には、メリットだけでなくリスク・デメリットも理解しておくことが重要です。

 

手数料がかかる

 

プロジェクトを実施し資金調達に成功した場合でも、プラットフォーム利用料や決済手数料が発生します。一般的に、調達額の約9%~20%程度が手数料として発生することが多いでしょう。

このため、調達金額から手数料・リターン提供コスト・プロモーション費用を差し引いた実質的な手取り額を事前に見通す必要があります。また、目標金額を達成しなかった場合の返礼品準備・運営コストのみが発生してしまう「収支見込みのズレ」も注意点です。

 

プロジェクト失敗・頓挫による「社会的信用」の低下リスク

 

資金を集めたにもかかわらず、プロジェクトが途中で頓挫したり、予定通りの成果を出せなかったりすると、支援者や社会から「約束を守れなかった企業」として信用を損ねる可能性があります。

特に支援者に対してリターンを約束していた場合、返礼品の配送遅延や内容変更などが生じると、企業のブランド・信頼性にも影響を及ぼすため、実行体制・リスク管理を慎重に行わなければなりません。

 

企画・広報の労力が大きい

 

クラウドファンディングで資金を集めるには、ただプロジェクトを掲載すれば良いというわけではありません。魅力的な企画設計、プロモーション用の動画や写真、SNS投稿、支援者へのコミュニケーションなど、募集期間中の広報・拡散活動が不可欠です。

中小企業にとってはこれらの準備・運営に人手やコストがかかるため、通常業務との両立が難しいケースもあります。また、募集期間が終了するまで継続的な支援者対応・進捗報告が必要となるため、リソースを事前に確保しておくことが大切です。

中小企業におけるクラウドファンディングの資金調達事例

ここでは、中小企業庁のレポートを基に、中小企業がクラウドファンディングを活用して成果を出した具体的な事例を紹介します。

 

コロナ禍で打撃を受けた遊園地が5,500万円を調達

 

新潟県阿賀野市の老舗遊園地、サントピアワールドは、新型コロナウイルスの影響で運営に大きな打撃を受けた際、金融機関からの通常の融資が難しい中、クラウドファンディングを活用しました。

このプロジェクトでは、「1日貸切り権」など遊園地ならではのユニークな返礼品を設定し、話題化に成功。支援を集めることで資金調達だけでなく、将来的な団体利用増などの売上増につながる可能性も実現しました。

このように、クラウドファンディングが資金面だけでなく事業再構築・新しい集客チャネル開拓のきっかけになった事例といえるでしょう。

 

萬古焼の土鍋がテスト販売と新規顧客獲得に成功

 

伝統的な陶器産地、三重県四日市のbestpot(萬古焼土鍋)では、クラウドファンディングを「テスト販売+販路開拓」の場として活用しました。このプロジェクトでは、商品化前の段階で支援を募ることで実売データ・顧客の声を得て、開発方向性を固めるとともに、新規顧客層も獲得できたようです。

このように、クラウドファンディングを「資金を集める」だけではなく、製品のブラッシュアップ・販路拡大・顧客接点づくりの手段として考えられます。

まとめ

クラウドファンディングは、中小企業にとって「従来の手段とは異なる資金調達+マーケティング+顧客接点づくり」の可能性を提供します。低リスク・テストマーケティング・PRやファン形成といったメリットを活かすことで、新製品や新規事業、地域密着ビジネスにも有効です。

ただし、手数料・プロジェクト実行リスク・企画・広報の労力といった注意点も存在します。実行にあたっては、目的・対象・リターン設計・支援者との関係性・実行体制を事前に整理し、適切な形式を選ぶことが肝要です。

また、中小企業の資金調達においては、クラウドファンディングと並行して、返済不要の「補助金・助成金」の活用も重要な選択肢となります。当サイト運営会社の株式会社staywayが提供する「補助金クラウド」などを活用し、自社で利用できる制度がないか確認してみるのもよいでしょう。

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