社債とは?株式・借入金との違いや主要な種類を解説

公開日 2025/06/13
更新日 2025/06/13
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企業が資金を調達する際には社債や株式、借入金など多様な手段があります。これらの違いや特徴の理解は、投資家や経営者にとって非常に重要です。

この記事では、社債の基本的な概念や種類、そして株式や借入金との違いについて解説します。資金調達の手段を検討する際の参考にしてください。

社債とは?

社債とは、企業が資金調達を目的として発行する債券のことです。投資家は社債を購入して企業に資金を貸し、企業は定められた期間内に利息を支払い、満期時に元本を返済します。

社債は、企業にとって銀行融資や株式発行とは異なる資金調達手段であり、投資家にとっては比較的安定した投資先とされています。

ただし、発行企業の信用リスクや市場金利の変動など、投資にはリスクも伴うものです。

社債の種類

社債には、発行形態や特性に応じてさまざまな種類があります。主な社債の種類は以下の7つです。

1. 普通社債

2. 転換社債

3. ワラント債

4. 劣後債

5. 電力債

6. 金融債

7. 外国債

 

普通社債

普通社債は、中長期的な資金の調達を目的として企業が発行する、最も一般的な社債です。単に「社債」と呼ばれる場合も多く、発行体の信用力にもとづいて投資家に販売されます。

これらの社債は満期時に元本が返済され、定期的に利息が支払われる仕組みです。利率や償還期間は、発行時の市場状況や企業の信用度によって異なります。

 

転換社債

転換社債(CB)は、一定の条件下で発行企業の株式に転換できる権利が付いた社債です。投資家は定められた期間内に、特定の価格(転換価格)で社債を株式に転換できます。

株価が転換価格を上回ると投資家は社債を株式に転換し、値上がり益を獲得します。株価が上昇しなくとも、保有し続ければ定期的な利息収入と満期時の元本返済が受け取られます。

 

ワラント債

ワラント債は、新株予約権が付随した社債です。投資家はあらかじめ定められた価格で発行企業の新株を購入する権利を持ちます。

この新株予約権(ワラント)は、一定の期間内に行使できます。ワラント債の特徴として、社債部分とワラント部分を分離して売買が可能です。

新株予約権を行使して株式を取得する際には、別途資金の払い込みが必要ですが、社債部分は引き続き保有し、利息収入を獲得できます。

 

劣後債

劣後債(れつごさい)は発行体が経営破綻した際に、返済順位が低い社債です。普通社債や借入金などの一般債権者への弁済後に、劣後債の元本や利息が支払われます。

このようなリスクの高さから、劣後債は一般的な社債よりも高い利回りが設定されるのが一般的です。特に金融機関が自己資本比率を高めるために、発行するケースが見られます。

 

電力債

電力債は、電力会社が発行する社債で、電気事業法にもとづいて発行されます。発行体の全財産に対して他の債権者より優先して弁済を受けられる、一般担保が付されています。

そのため、電力債は信用力が高く、個人投資家にも人気がある社債です。発行頻度も高く、主に設備投資などの資金調達手段として利用されています。

 

金融債

金融債とは、特定の金融機関が特別法にもとづいて発行する債券です。商工組合中央金庫、農林中央金庫、信金中央金庫などが発行し、資金調達手段として利用されています。

金融債は信用力が高く、個人投資家や機関投資家に利用される債券です。定期的に利息が支払われる利付金融債と、利息相当分を差し引いた額で発行される割引金融債があります。

 

外国債

外国債(外債)とは、発行体、発行市場、通貨のいずれかが外国である債券を指します。具体的には、外国の政府、企業、国際機関などが発行する債券です。

外債には、米ドル建てやユーロ建てなどの外貨建て債券や、外国の発行体が日本円で発行するサムライ債など、さまざまな種類があります。

 

社債のメリット

社債の発行は、企業と投資家の双方に多くのメリットをもたらします。ここではそれぞれの側のメリットを見ていきましょう。

 

企業側のメリット

企業側の主なメリットは、以下の3つです。

・資金調達の多様化

・コスト面での優位性

・財務基盤の強化

資金調達の多様化

社債の発行により、企業は銀行借入に依存せず、投資家から直接資金を調達できるようになります。これにより、金融機関の融資条件や制約に縛られず、柔軟な資金調達が可能です。

また、金融機関からの借入と比較して、資金の使途に関する自由度が高い傾向があります。企業は戦略的な投資や事業拡大などの多様な目的に、調達した資金を活用可能です。

 

コスト面での優位性

社債の発行は、銀行借入と比較して有利な条件で資金調達が可能な場合があります。特に、利率や償還期限の条件を企業が主体的に設定できるため、コスト抑制が可能です。

さらに、社債は多額の資金を一度に調達できます。これにより、大規模なプロジェクトや設備投資など、まとまった資金が必要な場面での資金調達が比較的容易です。

 

財務基盤の強化

社債を発行することで、長期的な負債を確保し、財務の安定性の向上が図れます。これは、返済期間や条件を柔軟に設定できるため、資金繰りの計画が立てやすくなるからです。

また、社債発行により銀行借入に頼らない資金調達ができ、金融機関への依存度を低減できます。これにより、資金調達手段の多様化が図られ、財務基盤の強化が可能です。

 

投資家側のメリット

投資家側の主なメリットは、以下の3つです。

・安定した収益性

・リスク管理のしやすさ

・投資の柔軟性

安定した収益性

社債は、投資家に対して定期的な利息収入を提供します。多くの場合、年に2回の利払いが設定されており、これにより安定したキャッシュフローの獲得が可能です。

さらに、社債の利回りは定期預金や国債と比較して、高めに設定される傾向があります。信用リスクを反映したもので、投資家はリスクを考慮しつつ、より高い収益を期待できます。

 

リスク管理のしやすさ

満期日や利率が事前に定められているため、投資家は将来の収益を予測しやすく、計画的な資産運用が可能です。資金の流動性や再投資のタイミングを、効果的に管理できます。

また、株式と比較して価格変動リスクが低く、金利の変動や発行体の信用状況の影響はあるものの株式よりも安定した債券です。リスクを抑えた投資を求める投資家に適しています。

 

投資の柔軟性

投資家のニーズに応じて、1年程度の短期から10年以上の長期までさまざまな満期期間のものが提供され、資金の運用期間や目的に合わせて柔軟に投資計画を立てられます。

また、一部の社債は中途換金ができ、必要に応じて市場で売却可能です。ただし、市場環境や流動性次第では望む時期での売却が困難で、売却価格が変動するリスクも存在します。

社債と株式の違い

ともに企業の資金調達手段ですが、その性質は大きく異なるものです。社債は企業が投資家から資金を借り入れる形態であり、元本を満期日に返済する義務が伴います。

一方、株式は投資家からの出資を受けるもので企業には返済義務がなく、投資家は企業の所有者(株主)として位置づけられます。

投資家の立場から見ると、社債は定期的な利息収入が得られ、満期時に元本が返済されるため、比較的安定した投資対象です。

これに対し、株式は企業の業績や市場動向により配当金や株価が変動するため、リスクは高いものの、高いリターンを期待できます。社債と借入金の違いともに企業が負債として資金を調達する手段ですが、調達先や条件設定に違いがあります。

社債は主に市場を通じて多数の投資家から資金を集め、企業は利率や償還期限などの条件を比較的自由に設定可能です。

一方、借入金は金融機関との一対一の契約であり、返済条件や金利は金融機関との交渉によって決まります。

また、社債は利息を定期的に支払い、元本は満期時に一括返済する形態が一般的です。一方、借入金は通常、毎月元本と利息を返済し、返済の負担が分散される特徴があります。

まとめ

社債は、企業が投資家から資金を借り入れる手段であり、満期日や利率が事前に定められています。投資家は安定した収益を期待でき、企業は資金調達の多様化を図れます。

一方、株式は企業の所有権の一部を投資家に提供する資金調達方法で、返済義務はありません。また、借入金は金融機関からの融資であり、返済条件や金利は金融機関との交渉で決定されていきます。

事業者のみなさんは、他の資金調達方法のさまざまな違いを理解することにより、自社の状況に応じて社債を効果的に活用してください。

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